『セカコイ』で再タッグ!三木孝浩監督が語る、「また一緒にやりたいと思わせてくれる」福本莉子の向上心
第26回電撃小説大賞でメディアワークス文庫賞を受賞した、一条岬の同名小説を映画化した『今夜、世界からこの恋が消えても』。公開中の同作で、眠ると記憶がリセットされてしまう前向性健忘という難病を患うヒロイン、日野真織役を演じているのは福本莉子だ。
メガホンを取る三木孝浩監督とは、2020年公開の映画『思い、思われ、ふり、ふられ』以来のタッグ。互いの印象や今作の撮影エピソードを聞いていくと、三木監督の映画作りへの想いや、福本の演技への真摯な姿勢などを垣間見ることができた。
「莉子ちゃんの一生懸命な感じがすごくいいなと思っていたんです」(三木)
――『思い、思われ、ふり、ふられ』以来、再タッグが決まった際の心境をお聞かせいただけますか。
三木「『ふりふら』で、莉子ちゃんの一生懸命な感じがすごくいいなと思っていたんです。前回は4人がメインキャストでしたが、今回はヒロインということで、もう一段上へ、一緒に成長しているような感覚がありましたね。 (福本に)すごい気合い入ってたよね。ちょっと肩に力が入ってた感じ」
福本「入ってました。『ふりふら』の時とはまた違う緊張感がありました。あの時も初めての大きな役でしたけどね」
三木「『ふりふら』の時は割りと素直な役で、性格的にはそこまで複雑なわけではなかったんですが、今回は設定上、かなりお芝居のスキルを問われるところがあったと思うので、そのプレッシャーがあったんじゃないかな」
福本「すごく難しかったです」
――これまでも話題作に出演されていらっしゃいますが、この作品では特にどんなところにプレッシャーを感じたのでしょうか。
福本「やっぱり三木監督にまた呼んでもらえてよかったという安心感があった反面、前回の『ふりふら』では後悔したところもあったので『また一緒にやりたいけど、やれるかな』という想いがありました。脚本に月川翔さん、音楽に亀田誠治さんと、企画書に並ぶ方々の名前からも気合いを感じる作品だったので『これはもう絶対に外せないし、絶対に頑張らないといけない』と気が引き締まりました。そのうえで真織が記憶障害を抱える役だということもあって、作品に入る前から不安でいっぱいでした」
三木「『ふりふら』の時に莉子ちゃんをいいなと思ったのは、めちゃめちゃ負けず嫌いだったからなんです。できないことがあるとすごく悔しがるんですよね。でも、そうやって悔しがれる人はちゃんと成長するなと思っていたし、そういうところが『また一緒にやりたいな』と思わせてくれる要因でもありました」
「俳優の満足度と監督の満足度でギャップはあると思っている」(三木監督)
――先ほど福本さんが「『ふりふら』では後悔したところがあった」とおっしゃっていました。
三木「そうそう。『ああ、私もうちょっとできたのに』と言うんです」
福本「今回もありました(笑)。でも完璧は無理ですね。人間だから」
三木「それでいいと思う。ちょっとずつ成長していけば」
――福本さんは撮影が終わってから反省することが多いんですか?
福本「いつも撮影しながら思うんです。カットがかかっても『もうちょっとああしておけば』って」
三木「僕はそのカットでOKを出しているんだけど、表情でわかるんですよ。監督が『OKだよ』と言ってるのに、本人は『うーん』と納得してない(笑)」
――たくさんの人が関わりながら映画を作るうえで、100%全員が納得する仕上がりに持っていくことはかなり難しいことのように思えます。妥協ではないと思いますが、三木監督はそのあたりのジレンマを感じることはありませんか。
三木「俳優の満足度と監督の満足度でギャップはあるものだと思っているんです。俳優が気持ちの乗った演技をできたと感じていたとしても、それが画としてどう見えるかはまた別の問題。心では芝居ができていてもビジュアルとして見えていなかったら、伝わらないものになってしまう。反対に、俳優は気持ちが乗れなかったと感じていたとしても、表情がそう見えているのであれば、僕はそれでOKを出すことはできると思っているんです。引きの画か寄りの画かという点でも違うし、そのバランスは監督が判断すればいいんじゃないかなと思います」
――福本さんから見て、三木監督作品はどういう現場なのでしょうか。
福本「ワンシーンにかける時間が長めですね。めちゃくちゃ丁寧なんです。ほかの現場によってはOKがかかるのが早いこともあるんですが、そうなると逆に不安なんです。三木監督の長さに慣れているから(笑)。それから、三木監督はいつも作品に入る前、作品の雰囲気を伝えるためにオリジナルのプレイリストを作ってくれるんです(笑)」
――それは、劇中で使用される楽曲ではなく?
三木「そうではなくて、いろいろなことを説明するよりも『この映画のイメージにはこういう曲が似合うよね』というサウンドトラックを勝手に作るんですよ」
福本「それを聞きながら台本を読んだりしていました」
――それがあると役作りがしやすいんですか。
福本「そうですね。なんか、ぴったりはまるんです」