hideの実弟と映画プロデューサーが明かすhideの素顔…「『TELL ME ~hideと見た景色~』では松本秀人の優しい部分が描かれている」
hide の実弟・松本裕士の著書「兄弟 追憶のhide」(講談社文庫刊)をもとに、hideが遺した音楽を世に届けるため奮闘する弟と仲間たちの軌跡を描いた、映画『TELL ME ~hideと見た景色~』が公開中だ。主人公hideの弟でマネージャーの松本裕士(今井翼)が、hideの共同プロデューサー I.N.A.(塚本高史)ら仲間たちと共に多くの困難を乗り越え、前に進んでいく姿が観客を魅了している。MOVIE WALKER PRESSでは、原作者の松本裕士と、当時hideの宣伝担当で本作を企画したプロデューサーの姉帯恒に独占インタビュー。映画の中で描かれている当時のこと、hideとの思い出について語り合ってもらった。
「『俺になにかあったら、本でも書けよ』とhideさんに言われていた」(松本)
――まず初めに、今回、hideさんの実弟である松本裕士さんを主人公にした劇映画を制作するに至った経緯を、姉帯さんにお伺いしたいと思います。
姉帯「本作のベースになっている『兄弟 追憶のhide』が出版された時から、この物語をいつか映像化したいという夢を抱いていました。そこから時間が経って、前作『HURRY GO ROUND』を制作している時に、この話を映画化できるかもしれないと思いました。hideさんの人生はドキュメンタリー映画やニュースなどで知られていますが、僕もhideさんの周りにいたスタッフの1人として、当時、裏方の人間が壮絶な状況に置かれていたことをよくわかっていました。その裏側の物語と、松本(裕士)さんや稲田(I.N.A.)さん、多くのスタッフがいるhideさんの周りには愛があったということを伝えたいと思いました。もう一つは、hideさんが亡くなってから24年経ちますが、ここまで第一線で生き続ける人は世界中でもなかなかいない。それは、松本さんを中心とした皆さんが一生懸命、hideさんの魅力を発信し続けてくれたからこそ、いまにつながっている」
松本「『俺になにかあったら、本でも書けよ』とhideさんに言われていたんですが、僕なんかが書けないと思っていたんです。そのことを姉帯さんに話したら、『本に書いて残そう』と説得されて」
姉帯「結構、嫌がってたもんね」
松本「いざ、hideさんという後ろ盾を失くした時に、僕はhideさんではないので、僕が代弁するのも変だし、言葉にできない難しさがありました。姉帯さんから『本に事実を書き記しておこう』と言われたのがすべての始まりでした。その本を映画化した本作が公開されて、こんなに多くの方に喜んでいただけるなんて。映画という形で、裏側の大変さを表現してくださって、本当にありがたいです」
――hideさんが亡くなった直後は、混乱のなかにあったと思いますが、本を書かれたタイミングで、当時を振り返ることができたのでしょうか?
松本「アルバム『Ja,Zoo』を制作し、全国ツアーも終わり、hide MUSEUMを設立し運営を始めたころ、やっと落ち着いて、本を書くために、当時を思い出すことができました。hide MUSEUMをつぶすわけにはいかない、新しいことをないかやらなきゃいけないと、毎日怖くて震えていました。hideさん本人がいないなか、新しいものをどうやったら生みだせるんだろうと、日々葛藤していました」
――主演の今井翼さんが、まさに裕士さんだったという声が多数届いています。
姉帯「松本裕士という人物像について、監督や(プロデューサーの)清水さんほか制作陣と話し合い、純粋で、少し不器用で、想いが強いというキャラクターが出来上がりました。役を演じるというよりは、キャラクターに近い人がいいという話になり、今井さんにオファーすることになりました」
松本「今井さんが引き受けてくださって、ビックリしたよね。ひっくり返りました」
姉帯「あんなにカッコいいですからね(笑)。監督や制作陣が、数年前の立ち上げの時から松本さんとコミュニケーションを取って、松本裕士像を固める準備ができていたのがよかったと思います」
松本「完成披露上映会で初めて今井さんにお会いした時にもお伝えしましたが、ここまで役に入り込んで演じてくださった今井さんには感謝しかないです。僕を演じることで、今井さんの精神状態がおかしくなってしまうのではないかと心配で仕方ありませんでした。僕自身、精神がおかしくなりましたから」