『魔女の宅急便』を彷彿させる?黒猫が誘う新たな世界への冒険を描く『ラック~幸運を探す旅~』、監督&キャストにインタビュー
自他共に認める“世界一不運な女の子”サムは、黒猫のボブに連れられて“運の国”に迷い込む。児童養護施設で育ったサムは、新しい家族に迎えられる友人のために、幸運のコインを手に入れようとするが…。スカイダンス・アニメーションによるApple TV+用のアニメーション映画『ラック~幸運を探す旅~』のペギー・ホームズ監督とボイスキャストの面々が、バーチャルで行われた取材で映画の成り立ちやそれぞれの人生観について語ってくれた。
「黒猫を演じるにあたって思い出したのは、日本のあの名作」
主人公のサムを演じるエヴァ・ノブルザダは、ブロードウェイの『ミス・サイゴン』でミュージカルに初出演し、トニー賞にノミネートされた俊英。これまで舞台でキャリアを積んできたノブルザダは、初の映画出演が声優だった。「舞台の演技と声の出演は、完全に違うものです。舞台では身体のすべてを使って感情や物語を伝えようとしますが、アフレコでどんなに身体を動かしても、声しか録音されません。そのことに気がついて、声にどのように感情を込めていくのかとても悩みました。悩みながらも、とても大きなことを学んだと思っています」と告白し、実写映画に挑戦する際は「絶対にトム・クルーズと共演したいんです。彼のようなキャリアを積んで、彼のように稼ぎたい(笑)」と抱負を語る。
黒猫が誘う新しい世界への冒険と気づき…勘のいい方ならあの作品を思いつくかもしれない。ボブを演じるサイモン・ペッグは、「宮崎駿監督の大ファンとして、『魔女の宅急便』のジジを思い出していただけたのはとても光栄です」と言い、両腕に入っている『千と千尋の神隠し』と『もののけ姫』のタトゥーを見せてくれた。『千と千尋の神隠し』は、ペッグと彼の娘が一番好きなアニメーション映画で、何度も繰り返し観ているのだそうだ。「黒猫のボブ役をオファーされた時、アニメ史の偉大なキャラクターの伝統を受け継ぐものだと身震いしました」と笑う。
ペッグは、ノブルザダや他のキャストに比べ、『アイスエイジ』シリーズや『タンタンの冒険/ユニコーン号の冒険』(11)などの出演でボイスアクトの経験が豊富だ。それでも、声での演技は3作目から出演しアクションをこなす『ミッション:インポッシブル』と比べても、とても難しいという。「アニメーターが僕らの動きを参考にしてキャラクターに活かすために、実際に動いてみることもありますが、基本的に自分1人の声だけでキャラクターを表現しなければなりません。『ミッション・インポッシブル』のような映画は、ほかの俳優と一緒に演技やスタントをする非常にオープンな撮影ですが、アニメーションはたった1人でずっと演技をしているので、不思議な感じがします」。さらに、アフレコは別々に録音することが多いため、「ウーピー(・ゴールドバーグ)とジェーン(・フォンダ)には会ったことがあるけれど、エヴァとは映画が出来上がるまで実際に会っていなかったんですよ」と、画面の中でとても良いケミストリーを築いている2人の意外な事実を明かした。
幸運のコインと黒猫に導かれサムが入り込んだ世界、“運の国”には躍るウサギやレプラコーンのキャプテン(声はウーピー・ゴールドバーグ)、愉快なユニコーンのジェフ、そしてエレガントなCEOのドラゴンらがいる。ドラゴンの声を演じるのはジェーン・フォンダ。アニメーション作品には『シンプソンズ』以来の参加というフォンダは、「強さと脆さを持ったCEOという役柄に惹かれて、ドラゴンを演じられたら楽しそうと思いました。このドラゴンはどんな女性なのかと考えたときに、少しばかり虚栄心がある女性として演じようと思いました。気を引きたい時に尻尾をパタパタ動かすのは、私のアイデアなんですよ」と、役作りを語る。映画の中のドラゴンのようにシャキッとしたフォンダは、今年85歳。映画界のレジェンドといえる彼女だが、「60年俳優をやってきて、いまがキャリアの最終章だと思っています。だからこそ、自分が楽しいと思えること、そして自分自身に挑戦することをしたいんです」と、声優に挑戦した理由を述べる。