視覚と聴覚で味わう、至高のエンタメ体験!謎に包まれた『NOPE/ノープ』の衝撃を味わえる “IMAX推し”
現代ハリウッドの鬼才、ジョーダン・ピールが“映画に愛を込めた”挑戦作
『ゲット・アウト』で人種差別という根深い問題を斬新な視点からとらえ、初監督作品かつホラージャンルとしては異例のアカデミー賞作品賞、監督賞にノミネートされ、脚本賞を受賞。一躍、ハリウッドでもっとも次回作が期待される一人として脚光を浴びることとなったピール監督。続く『アス』(19)では、それらのプレッシャーを物ともせず挑戦を続け、意外性に富んだ展開と壮絶なバイオレンスを織り込みながら格差社会を描ききったことで称賛を集めた。
SFやスリラーといった娯楽性の強いジャンルのなかで、時に皮肉たっぷりに、時に鋭利に現代社会へ警鐘を鳴らし続けるピール監督の持ち味は、そうした既存の“枠組み”にとらわれない、挑戦的な映画づくりのスタイルにほかならない。本作でもまた社会問題へと疑問符を投げかけてるが、それを未確認飛行物体との遭遇という、映画的スペクタクルのなかで描きだすのだからユニークさ全開だ。
本作のもう一つの特徴は、映画づくりや映画業界に対して愛情を込めつつも、ある種の疑問も投げかけていることだ。「自分たちの仕事を評価しつつ、批判する作品にしたいと思っていた」とピール監督が語っているように、主人公一家は映像業界で使われる動物の世話をする、裏方中の裏方。そこに、成長したことで干されてしまった元子役や、気難しい大御所カメラマンが絡み合い、普段観客が見ることのできない、“映画の裏側”の悲喜こもごもを映しだしていく。
ピール監督の映画への強い愛情が見え隠れするのも、映画ファンにはたまらないポイントだ。主人公のOJが着用しているパーカーは、ドウェイン・ジョンソンの初主演映画となった『スコーピオン・キング』(02)の撮影にOJが関わった際にもらったものという設定だ。ほかにも1990年代に一世を風靡したテレビのシットコムの雰囲気を忠実に再現したり、会話の端々に懐かしい映画を想起させるものが登場するなどのオマージュが盛りだくさん。
また、劇中に登場する未確認飛行物体の外見や動きは、「新世紀エヴァンゲリオン」から刺激を受けたと公言されており、クライマックスには『AKIRA』(87)の直接的なオマージュシーンも登場。アニメファンにも見逃せない部分だ。
IMAXの“魔法的”な没入感で、『NOPE/ノープ』を全身で体験せよ!
IMAXフィルムカメラで撮影され、息もつかせぬテンポでSF、スリラー、アクションなど次々にジャンルを横断する、エンタメ感たっぷりの物語が語られていく本作は、IMAXの巨大スクリーンにかじりついて観るのが最適と言える。
ピール監督は、本作のインタビューのなかでIMAXの魅力について尋ねられると、「IMAXの画角だと、上を見ているシーンでは本当に上を見ている感じになる。映画を創りあげるすばらしい方法だと感じました。そして同時に、作り手としては、映像の品質が高いからこそストーリーがとても重要になってきます。IMAXとは没入感の魔法的な経験であり、IMAXで映画を作ることはその責任に応えるということ。なるべく多くの観客が、本作をIMAXで観てくれることを願っています」と、その何物にも代えがたい魅力を語っている。
先が読めない独創的なストーリーを、視覚と聴覚で味わう至高のエンタメ体験。テーマからディテールに至るまで、ピール監督の映画への愛情が存分に詰め込まれたのが、『NOPE/ノープ』だ。是非とも没入感たっぷりのIMAXで、未曾有のスペクタクルを目撃してほしい!
文/久保田 和馬