マーベルを率いる女性プロデューサーが明かした“真のヒーロー像”「誰でも自分自身のなかにスーパーヒーローがいる」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
マーベルを率いる女性プロデューサーが明かした“真のヒーロー像”「誰でも自分自身のなかにスーパーヒーローがいる」

インタビュー

マーベルを率いる女性プロデューサーが明かした“真のヒーロー像”「誰でも自分自身のなかにスーパーヒーローがいる」

ビクトリア・アロンソは、2005年にVFX担当上級副社長としてマーベル・スタジオに参加、2021年からはケヴィン・ファイギのもとで映像作品を統括する制作担当社長を務めている。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のすべての作品でプロデューサーを務め、『アベンジャーズ』(12)からは製作総指揮に名を連ねる。7月末に米サンディエゴで行われたコミコン・インターナショナルと、9月9日(金)~11日(日)の3日間にわたって米国カリフォルニア州アナハイムで開催される、ディズニー全社をあげたコンベンション「D23 Expo」の間で、アロンソにマーベルが目指す方向やMUCが目指す多様性について聞いた。

2005年にマーベル・スタジオに参加して以降、マーベルと共に歩んできたビクトリア・アロンソ
2005年にマーベル・スタジオに参加して以降、マーベルと共に歩んできたビクトリア・アロンソ[c]Everett Collection/AFLO

「多様性のある物語を世に出すように心がけています」

2012年からの10年間で作られたMCUの劇場用映画は23本。フェーズ1から3を「インフィニティ・サーガ」、フェーズ4以降を「マルチバース・サーガ」と区切り、複雑に絡み合う巨大なユニバースを縦横無尽に描く。『アイアンマン』(08)から『アベンジャーズ』をフェーズ1、『アイアンマン3』(13)から『アントマン』(15)までがフェーズ2、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)から『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)がフェーズ3、すなわち「インフィニティ・サーガ」。そして、オリジナルドラマシリーズの「ワンダヴィジョン」から『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(11月11日公開)までをフェーズ4、『アントマン・アンド・ザ・ワスプ:クワントゥマニア』(2023年2月17日全米公開予定)から『Thunderbolts』(2024年7月26日全米公開予定)をフェーズ5、2024年11月3日全米公開予定の『Fantastic Four』から先をフェーズ6とし、「マルチバース・サーガ」と位置付ける。各フェーズには、劇場公開映画だけでなくDisney+で独占配信されるオリジナルドラマシリーズも含まれる。

コミコン・インターナショナルに登場した『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』チーム
コミコン・インターナショナルに登場した『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』チーム2022 Getty Images

今後何年間にも及ぶ壮大な計画を前に、アロンソは「私たちはいつもいろいろなことを恐れているんです、ウォルト・ディズニー・カンパニーに『もういい、出ていけ!』って言われてしまう日についても(笑)」とジョークを言いながら、こう続ける。「観客に飽きられてしまうのを心配する前に、マーベルには6000を超えるキャラクターがいて、それぞれにたくさんの物語があることを忘れてはなりません。テレビドラマを20年、30年と観続けている視聴者は、もう刑事ドラマや医療ドラマを観飽きてしまったでしょうか?そんなことはないでしょう。題材がなんであれ、なにが彼らを傷つけ、なにが彼らを救い、誰が彼らを愛し、そして逆の立場になるのか、つまり人間について描いているから、何十年も観続けられているのです。そして、それはまさにスーパーヒーローの物語です。ハリウッドでは何千本という映画が作られ、興行成績を上げなくても“成功”と見られる作品もあります。マーベルというレッテルの下では、5億ドル稼いでも『失敗だ』と言われてしまうこともあります。でも、マーベルの旗の下にある物語は、必ずしも大きな作品である必要はないと思います。MCUを楽しんでくれる観客のみなさんに飽きられないよう、多様性のある物語を世に出すように心がけています」。

『エターナルズ』(21)ローマプレミア。写真一番右がビクトリア・アロンソ
『エターナルズ』(21)ローマプレミア。写真一番右がビクトリア・アロンソ[c]SPLASH/AFLO

その“多様性”が現れているのが、近年のMCU作品だ。2018年の『ブラックパンサー』では、ライアン・クーグラーとチャドウィック・ボーズマンの黒人監督と黒人俳優によるスーパーヒーロー作品が、アメコミ史上初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされた。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)は、日系アメリカ人のデスティン・ダニエル・クレットンが監督を務め、シム・リウ、オークワフィナ、トニー・レオン、ベネディクト・ウォンといったアジア系俳優が活躍した。『ノマドランド』(20)で第93回アカデミー賞作品賞と監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督の最新作は、香港系イギリス人のジェンマ・チャンが主演の『エターナルズ』(21)だった。


アジア系監督、俳優が起用された『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)
アジア系監督、俳優が起用された『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)[c]Everett Collection/AFLO

MCU全体の制作状況を監督する立場にあるアロンソにとっての“本当の多様性”とはなんだろうか。「特定の人種グループを選んでいるわけではなく、これは全体的な取り組みなのです。私たちにとっては、『シャン・チー』を作ることだけでなく、すべてのプロジェクトにアジア系の俳優が参加していることが重要だと考えます。『ブラックパンサー』が、黒人による黒人のためだけの作品である必要はありません。いいえ、どのプロジェクトにも黒人にいてほしいし、アジア系も、ラテン系もいなくてはダメ。そして、白人にもいて欲しいんです(笑)。いまは、どうしたら才能のある多様なクリエイターや俳優を集められるか、試行錯誤しているところです。こんなに才能に溢れる人たちが、その才能を発揮する場所に就けなかったのは本当に残念なことだと思います」と語る。

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