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マーベルを率いる女性プロデューサーが明かした“真のヒーロー像”「誰でも自分自身のなかにスーパーヒーローがいる」

インタビュー

マーベルを率いる女性プロデューサーが明かした“真のヒーロー像”「誰でも自分自身のなかにスーパーヒーローがいる」

「『Argentina, 1985』を製作したことは、私が子どもたちに遺せる遺産となりました」

アロンソは、アルゼンチン出身。ハリウッドでも彼女のようなラテン系女性のスタジオ上級職が珍しかった頃から、マーベルの映像制作チームを率いてきた。「私はいつも、(映画に)私たちが生きている社会を反映させることが重要なのではなく、必要不可欠なのだと言い続けてきました」と、15年以上貫いてきた理念を語る。そして、今年はもう1本、マーベルの仕事を離れとても個人的な作品のプロデューサーを務めた。9月に行われる第79回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映される『Argentina, 1985』だ。今作は北米で9月30日に公開されたのち、Amazon Prime Videoでも10月21日に全世界配信される。

【写真を見る】MCUを作り上げた女性プロデューサー、ビクトリア・アロンソが手掛ける最新作『Argentina, 1985』
【写真を見る】MCUを作り上げた女性プロデューサー、ビクトリア・アロンソが手掛ける最新作『Argentina, 1985』

「どの国の歴史においても、暴力や虐殺の歴史は悲しい記憶です。自分の人生に関わる作品でなければ、プロデューサーを引き受けることもなかったでしょうし、ディズニーにも参加していいかどうか尋ねなかったと思います。この映画は、私が生まれ育ち生き延びてきた間、ずっと頭の片隅で考えていたことを描いています」とアロンソは言う。

『Argentina, 1985』は1970~80年代にかけてアルゼンチンで起こった国家による弾圧事件をめぐる物語
『Argentina, 1985』は1970~80年代にかけてアルゼンチンで起こった国家による弾圧事件をめぐる物語

1976年から82年にかけてアルゼンチンを統治した軍事政権による通称「汚い戦争」は、学生や運動家らを強制逮捕、拉致、拷問、殺害した国家による弾圧のこと。この事件を調査し、政権を起訴した検察官たちを描く映画だ。「マーベルは、私が娘に誇れる2つの大きな柱を与えてくれました。『キャプテンマーベル』と『ブラックパンサー』です。そして、『Argentina, 1985』を製作したことは、私が子どもたちに遺せる遺産となりました。『母は、彼女のやり方で闘ったのだ』と後に気づいてくれることを願います。アルゼンチンの国民でも、この虐殺を知らない人もいます。なぜなら、生き残った人々がそのことについて語りたがらないからです。刑事司法制度がなければ、民主主義は成り立ちません。そして、民主主義がなければ、私たちが望む世界は手に入りません。 だから私は刑事司法制度を信じ、民主主義を信じ、言論の自由を信じます。この作品は、わかりやすいスーパーヒーローの物語ではありませんが、私たちの映画が一貫して言っているように、『誰でも、自分自身のなかにスーパーヒーローがいる』というテーマを訴えています。(未来のために行動を起こすような)状況は、遅かれ早かれ誰の身にも起きるでしょう。そういった状況が訪れた時、どんな選択をするのかが問われると思っています」。


今後のマーベルにおけるマルチバース・サーガからも目が離せない!(『アベンジャーズ』)
今後のマーベルにおけるマルチバース・サーガからも目が離せない!(『アベンジャーズ』)[c]Everett Collection/AFLO

MCUが描くスーパーヒーローたちが悩み、傷つき、それでもよりよい世界を目指し闘うことを恐れないのは、アロンソのようなプロデューサーが作品の土台を支えているからなのだろう。至極個人的な想いの詰まった『Argentina, 1985』を製作することで、“ヒーロー”の仲間入りを果たした彼女が今後指揮する、マルチバース・サーガにも期待せずにはいられない。

取材・文/平井伊都子

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