「異世界おじさん」が生むシュールな笑いの正体とは?“90年代”ヲタクとZ世代のギャップがおもしろい

コラム

「異世界おじさん」が生むシュールな笑いの正体とは?“90年代”ヲタクとZ世代のギャップがおもしろい

現在放送中のテレビアニメ「異世界おじさん」が話題だ。“異世界もの”と言えば、現世から転生して来た主人公が、神様(的な存在)にもらったチート能力で異世界を無双するといったストーリーが想像されるが、本作はその見せ方が実に斬新。異世界ものでありながら舞台は現代であり、主人公の“おじさん”が家族やその友人と共に、自身の異世界での記憶をまるでYouTubeを見るかのように鑑賞しながらツッコミを入れていくというスタイル。おじさん世代にはちょっと懐かしく、Z世代には新鮮な、セガのゲームや「新世紀エヴァンゲリオン」など90年代ネタが満載で、おじさんと甥のたかふみの世代間ギャップによってシュールな笑いが引き起こされている。

「異世界おじさん」の第3弾キービジュアル
「異世界おじさん」の第3弾キービジュアル[c]殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会 [c]Hotondoshindeiru/KADOKAWA

「異世界おじさん」は、KADOKAWAのウェブコミックサイト「WebComic アパンダ」で連載中の、殆ど死んでいるによる同名コミックが原作。主人公は、17歳で交通事故に遭い、17年間の昏睡状態から目覚めたおじさん(声:子安武人)。見舞いに訪れた甥のたかふみ(声:福山潤)は、おじさんが17年もの間、異世界で生活をしていたことを告げられる。異世界での冒険に興味津々のたかふみはおじさんと同居し、YouTuberとして生計を立てながら、その合間におじさんの異世界での記憶を見せてもらうことになる。しかし、目の前に映しだされたのは、オークの亜種に間違われて狩られそうになる、おじさんの壮絶な日々。一方で、いつしか精霊と言葉を交わすことで強力な力を手に入れ、エルフ(声:戸松遥)ら様々な美少女と出会う展開も。最初は驚愕していたたかふみだったが、彼の幼なじみの藤宮(声:小松未可子)も加わって、気づけば連続ドラマでも観ているかのように、おじさんの異世界ライフに一喜一憂するのだった。

“ツンデレ”がわからず、ナチュラルにフラグを追っていくおじさん

異世界ものらしくチートな能力で次々と強敵を討ち滅ぼしていくおじさんだが、ことごとくお約束には至らないのが本作の特徴。物語をあらぬ方向に差し向け意外な展開へと誘う要因の一つに、おじさんの“ツンデレ”という概念への欠如が挙げられる。劇中でも「ツンデレ概念の一般化は2004年頃」と説明されている通り、おじさんはツンデレというものを知らないまま転生してしまった。そのため、明らかに好意を寄せてくれているエルフのツンデレを、ことごとくスルーしてしまう。アニメを観ながらたかふみたちと一緒に、思わず「おい!」とツッコミを入れている視聴者も多いことだろう。

窮地を救ってくれたおじさんに恋心を抱き、なにかと付きまとってくるエルフ(第4話「つらい中お前がいて、支えてくれてよかった」)
窮地を救ってくれたおじさんに恋心を抱き、なにかと付きまとってくるエルフ(第4話「つらい中お前がいて、支えてくれてよかった」)[c]殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会 [c]Hotondoshindeiru/KADOKAWA

さらに、おじさんはゲームに青春を捧げていたために恋愛経験に乏しく、劇中でも「新世紀エヴァンゲリオン」を引き合いに出して「アスカは加地さんが好きなんだ」と浅はかな恋愛論を披露しているほど。そのため、無自覚に思わせぶりな態度を取っていることも多く、相手を勘違いさせることもしばしばだ。それによってエルフ、メイベル(声:悠木碧)、アリシア(声:豊崎愛生)などの美少女に囲まれているにもかかわらず、お約束とは違う展開になってしまう。

エルフやメイベルからの好意にまったく気づかないおじさん(第5話「そういや俺、『暗殺』されかけたことあるな」)
エルフやメイベルからの好意にまったく気づかないおじさん(第5話「そういや俺、『暗殺』されかけたことあるな」)[c]殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会 [c]Hotondoshindeiru/KADOKAWA
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