『バイオハザード:ヴェンデッタ』清水崇Pと監修・小林裕幸が語るホラー描写

インタビュー

『バイオハザード:ヴェンデッタ』清水崇Pと監修・小林裕幸が語るホラー描写

シリーズ累計販売本数7700万本超を誇る人気サバイバルゲーム『バイオハザード』。その完全新作ストーリーとなるCG長編アニメ映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』が5月27日(土)より公開となる。本作でエグゼクティブ・プロデューサーを務めた『呪怨』シリーズの清水崇と、ゲームシリーズ第1作目から開発に関わり、本作で原作監修を務めたカプコンのクリエイター小林裕幸にインタビュー。

本作では、クリス・レッドフィールドやレオン・S・ケネディ、レベッカ・チェンバースなど歴代の人気キャラクターたちが、新型ウイルスによるバイオテロの脅威に立ち向かう。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』の辻本貴則が監督を務め、脚本は『PSYCHO-PASS サイコパス』を手がけた、小説家でアニメ脚本家でもある深見真が担当した。

清水プロデューサーと初タッグとなった小林は「いっしょにお仕事ができて、ホラーの勉強もさせていただき、大変楽しかったです」と喜ぶ。「今回、清水さんや辻本さんに、うちの大事なクリスたちスター3人のドラマの部分をしっかり演出していただきました。ゲームだと、プレイヤーが操作して進むから長いドラマは描けなかったので、そこをきっちりやっていただいて、非常にありがたかったです」。

清水プロデューサーは「いやいや」と恐縮しながら「僕は最初、カプコンの代表たる方々に『何言ってるの?こいつ』という無理難題ばかりを投げていたので、僕が監督じゃなくて良かったんじゃないかと」と苦笑い。「でも、小林さんは無理だと思われる時は、『それはない』とはっきりおっしゃってくれる方だったので、やりやすかったです。クリエイティブのところで、好き勝手にやりがちなところをちゃんと抑えてくださった」。

清水プロデューサーは、辻本監督の演出も素晴らしかったと称える。「実写畑の監督に入ってもらえたことも良かったです。辻本監督は最初こそ抑えていましたが、途中から脚本の余分なところをばっさばっさと切っていき、必要なところをちゃんと残していきました。もちろん監督が涙ながらに切ったところもあるし、カプコンさんの意向もあったとは思います。ただ、そういう舵取りを辻本さんがちゃんとやってくれたので、僕は小林さんがいる前で好き勝手なことを言えたんじゃないかなと。特に、日本のフルCG映画シリーズはちゃんとゲームとリンクしていますから」。

『バイオハザード:ヴェンデッタ』は原点回帰的な意味で「ホラー要素を強めたい」というのが製作陣の意向だったと小林は言う。「本当に“ドホラー”になるのはNGですが、『バイオハザード』として許される範囲でホラー色を強くしたくて。でも、清水さんからレオンの幼少期を描きたいと言われた時は『ごめんなさい』と言いました。ホラー映画で幼少期を描くのは正しいセオリーとしてあると思いますが、うちで長年やってきたキャラクターは、ゲームを楽しみにしてくれているファンのものでもあるんです。だから簡単に新しい設定を決めることはできないなと。そこは葛藤がありました」。

清水プロデューサーの「レベッカをもう少し血だらけにしたい」というリクエストについては、却下するしかなかったという小林。「僕たちは彼らをまるでハリウッドスターのように扱っているんです。清水さんがレベッカを汚そうとしたので、『ちょっと血が多いんじゃないですか?』と言ったし、ウイルスに冒された顔も少し直してもらったりしました。クリスのヒゲも減らしてもらいましたし、レオンはカメラワークによっては別人に見えるので、そこも直してもらいました。一番怖いのはファンの方々なので、僕はファンと作り手の両方の立場に立って頑張りましたが、そこは良いものができたと思います」。

清水プロデューサーも「すごく詳しいファンの方がいますからね」と、そこは承知の上だった。「ただ、ゲームもCG映画も、毎作ごとに技術は向上していくので、そこに何らかのより深い人間味とキャラクターの掘り下げによるドラマを持たせたかった。そこは辻本監督がバランスを取り、小林さんもいろいろな点を許してくれました。その結果、ゲームとリンクしつつも、これまでのシリーズを知らない人が観ても楽しめるようにわかりやすく作ったつもりです。是非たくさんの方に観てほしいです」。【取材・文/山崎伸子】

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