朝ドラヒロインから狂気の母をも体現…女優・戸田恵梨香の歩みをいまこそ振り返る
等身大の女性から、見た目も中身も癖のある役柄まで、幅広い演技で観る者を魅了してきた戸田恵梨香。そんな彼女が、湊かなえ渾身の同名小説を映画化した『母性』(11月23日公開)で、“娘であり続けたい”という精神状態のまま母親になったルミ子に扮し、原作者の湊も絶賛するその熱演ぶりが公開前から話題を集めている。
そこで本コラムでは、長いキャリアを持ち、幅広い役柄で並々ならぬ演技力と存在感を印象づけてきた彼女にフォーカス。あらゆる世代から熱い視線を集め続けている戸田の魅力を、キャリア史上最高の演技とも言われる『母性』までの道のりを振り返りながら探っていきたい。
「デスノート」のミサミサ役がブレイクのきっかけに
中学卒業後に上京し、本格的に役者としてのキャリアをスタート。2005年の「野ブタ。をプロデュース」では亀梨和也が演じた主人公、片桐修二の彼女で、学校のマドンナ的存在でもある上原まり子に扮して初々しい制服姿を披露。2007年のドラマ「ライアーゲーム」では天才詐欺師、秋山(松田翔太)の助けを借りながら、だまし合いの1億円争奪ゲームに挑む正直者の女子大生、神崎直をまっすぐな芝居で体現。同作の劇場版『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』(09)では、長時間にわたる“泣き”の芝居も注目された。
そんな戸田の大ブレイクのきっかけになったのは、映画初出演作『デスノート 前編』(06)とその続編『デスノート the Last name』(06)、スピンオフ作品『L change the WorLd』(08)で演じた弥海砂であるのは言うまでもない。
“ミサミサ”の愛称で親しまれている弥は、“死神のノート”で犯罪者を次々に葬っていく“キラ”こと夜神月(藤原竜也)を崇拝し、彼女自身も死神から守られている人気アイドル。その特異なキャラを、原作コミックそのままのツインテール&ゴスロリファッションでキュートに演じていたのが懐かしい。2016年に公開された正当な続編『デスノート Light up the NEW world』でも同じ役を8年ぶりに演じたが、共演の菅田将暉が、戸田が高校の英語教師を演じた2011年のドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」で生徒役だったことも手伝って、彼女の充実のキャリアを見つめ直すきっかけにもなった。