『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』サントラ収録の全20曲を徹底解説!リアーナ新曲や世界各国で見出された気鋭まで
6. Con La Brisa -Performed by Ludwig Göransson and Foudeqush
Foudequshはメキシコのエレクトロを得意とするシンガー。ゴランソンが奏でるキーボードの音色と、繊細なヴォーカルが幻想的な雰囲気を醸し出す。海中国タロカン帝国が全容を現すシーンで流れ、「一緒に行きましょう」というコーラスなので、スペイン語がわかる人はストーリーの行き先が早めに予想できるかもしれない。
7. La Vida -Performed by Snow Tha Product (Featuring -E-40)
スノー・ザ・プロダクトはカリフォルニア州サンノゼを拠点とする、メキシコ出身のフィメイル・ラッパー。スペイン語と英語を巧みに操れる強みがこの曲でも生かされている。ミチョアカン州出身の父親と祖父はマリアッチのシンガーだったため、幼いころからメキシコの民俗音楽に親しんだという。歌い出しのメロディにその影響が出ており、大らかに地元愛を歌っている。同じベイエリアの親分ラッパー、E-40が多くの人種が共生している様子をラップし、貫禄を見せる。
8. Interlude -Performed by Stormzy
ガーナ人の母をもつストームジーは、193cmの長身からくり出す低音ヴォイスが魅力。グライム・シーンの出身だが、猛々しいラップもせつない歌唱もこなすマルチ・タレントでUKにおけるトップ・ラッパーだ。政治的な発言も活発で、警察への抗議の意味を込めて覆面画家バンクシーがデザインしたスタブベストを着用してステージに立ったことも。大物の登場にふさわしく、この曲はブラックパンサーの復活に動き出す重要なシーンで流れた。「生きている限り 君の名を背負っていく」は、故ボーズマンの初代ブラックパンサーに捧げる言葉だ。
9. Coming Back For You -Performed by Fireboy DML
ナイジェリアのシンガー、ファイアボーイDMLの祈るような歌唱がすばらしい。「そう落とし前をつけるか!」と納得する感動的なシーンで流れた。現在26歳のファイアボーイDMLは2019年のデビュー・アルバム『Laughter, Tears and Goosebump』、2020年の『Apollo』ともに国内外で高い評価を受けている。アフロビーツにR&Bを織り込み、共感を呼びやすい生活感情を歌う。シンプルな歌詞だが、恋人の元に戻る決心のようにも、すでにこの世にいない人からのメッセージのようにも取れる。この曲と「Alone」「Anya Mmiri」はゴランソンと一緒にナイジェリアの若手プロデューサ―、Pプライムがコ・プロデュースしている。このサントラを足がかりに世界に活躍の場を拡げる若手が続出しそうだ。
10. They Want It, But No -Performed by Tobe Nwigwe and Fat Nwigwe
トビ・ンウィーグェはナイジェリアのイボ族出身の、アメリカで活躍する俳優兼ラッパー。妻のファット・ンウィーグェとの共演だ。トラップのビートに「ドリップ」といったスラングを入れ、いまどきの米ヒップホップのマナーに則っているが、インタールードはイボ語。カーチェイスから戦闘シーンになだれ込むシーンで流れ、戦う女子チームのかっこよさを際立たせた。興味深いのが、アウトロで、警官に向かって「やり合うつもりはない」と訴えるラップが入ること。これは、劇中に出てくるFBIへの言葉であると同時に、前作から2作目のあいだに爆発した“Black Lives Matter”(BLM)への目配せだろう。映画には直接的なつながりはないが、BLMには黒人男性が多く刑務所に入れられるシステムのせいで、最も弱い立場に置かれるのは黒人女性だという争点があった。強い黒人女性が力を合わせて闘う本作は、その現状を変えたいと願うすべての人々を励ますのだ。
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