いくつ知ってる?「アーサー王伝説」“円卓の騎士”関連作…A24『グリーン・ナイト』を原典から読み解く

コラム

いくつ知ってる?「アーサー王伝説」“円卓の騎士”関連作…A24『グリーン・ナイト』を原典から読み解く

オスカー受賞の名作から良質なアート作品、ホラー、スリラー、SFのようなジャンルものまで手掛け、映画ファンからの信頼も厚いスタジオA24製作の『グリーン・ナイト』(公開中)。『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(17)のデヴィッド・ロウリーが監督と脚本を務める本作は、「アーサー王伝説」に登場する円卓の騎士の一人、ガウェインが直面する試練と葛藤の旅が描かれる。原作は14世紀ごろに読まれた作者不明の「サー・ガウェインと緑の騎士」で、「ホビットの冒険」「指輪物語」の作者、J・R・R・トールキンが現代英語に訳したことでも有名だ。本作に対する補完も兼ねて、主人公のガウェインや原典について紹介したい。

長きにわたって親しまれてきた「アーサー王伝説」と円卓の騎士、ガウェイン

「アーサー王伝説」は、5世紀後半から6世紀初めに実在したと言われる、ブリテン島(イギリス)に侵略してきたサクソン人との戦いで活躍した英雄を謳った民間伝承や創作からなる物語群(諸説あり)。15世紀後半にトマス・マロリーによって書かれた「アーサー王の死」が最も有名で、現在までに小説や映画、アニメーション、ゲームの題材として親しまれてきた。ディズニー作品の『王様の剣』(63)やテリー・ギリアム監督の『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(75)、『エクスカリバー』(81)、『トゥルーナイト』(95)のほか、設定や登場人物の名前に影響が見られる「キングスマン」シリーズや『トランスフォーマー 最後の騎士王』(17)といった具合に、映画だけでもタイトルを並べればキリがない。近年では、ノーベル賞作家、カズオ・イシグロの「忘れられた巨人」にも老いたガウェインが登場するほか、ゲーム、アニメファンには様々な英雄や偉人が活躍する「Fate」シリーズでおなじみかもしれない。

「アーサー王の死」を基にアーサー王の生涯を描く『エクスカリバー』
「アーサー王の死」を基にアーサー王の生涯を描く『エクスカリバー』[c]Everett Collection/AFLO

アーサー王の物語は、危険な冒険や戦いに臨む英雄譚から高潔な騎士道精神、情熱的なロマンスなどの要素に満ちており、王を支える円卓の騎士たちも魅力的なキャラクターばかり。メジャーなところでは、“円卓最強”と称されながらアーサー王の妃、グィネヴィアと不義を結んでしまうランスロット、ランスロットの息子である聖杯探求の英雄、ガラハッド、悲恋に翻弄されるトリスタンなどが人気。アーサー王の甥で、勇猛果敢で優秀な騎士であるガウェインもまた、騎士道を重んじ気品にあふれている。さらに、朝から正午にかけて力が3倍になるという特性を持ち、”ガラティーン”という名の剣を愛用していたという伝説も。

リチャード・ギアがランスロットを演じた『トゥルーナイト』
リチャード・ギアがランスロットを演じた『トゥルーナイト』[c]Everett Collection/AFLO

一方で、ランスロットが人気のフランスで書かれた物語や、その影響を受けたマロリーの「アーサー王の死」などにおいては、引き立て役になることが多く、性格は俗っぽくなり、女たらしとして描かれるように。また、親友だったランスロットに3人の弟を殺されたことから復讐心を募らせ、彼との一騎打ちに挑むも敗北。この時、ランスロット討伐を激しく主張していたことから、円卓の騎士がアーサー派とランスロット派に二分され、その後のキャメロット王国の崩壊にもつながる原因を作ってしまったという見方もできる、負の側面が強調されている。

『キング・アーサー』では、『グリーン・ナイト』にも出演しているジョエル・エドガートンがガウェインを荒々しく演じている
『キング・アーサー』では、『グリーン・ナイト』にも出演しているジョエル・エドガートンがガウェインを荒々しく演じている[c]Everett Collection/AFLO

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