『告白』「Nのために」『母性』まで…映画とドラマで改めて没入したい湊かなえワールド!

コラム

『告白』「Nのために」『母性』まで…映画とドラマで改めて没入したい湊かなえワールド!

2008年に刊行された「告白」でセンセーショナルなデビューを果たして以来、現代を代表するベストセラー作家としての道を歩んできた湊かなえ。彼女が「これが書けたら、作家を辞めてもいい」との覚悟で執筆し、累計発行部数120万部を突破したヒューマンミステリー「母性」が、単行本刊行から10年の時を経て、実写映画となって公開中だ。

湊かなえと言えば、ミステリー界屈指のヒットメイカーであり、映画化、ドラマ化、コミック化など、生み出す作品の映像化が相次ぐ作家としても知られている。今回はこれまで映像化されてきた映画やドラマを振り返りながら、湊かなえワールドの魅力を改めて探っていきたい。

『母性』が公開された湊かなえ原作の映画やドラマを振り返る!
『母性』が公開された湊かなえ原作の映画やドラマを振り返る![c]2022映画「母性」製作委員会

“イヤミスの女王”湊かなえ作品 読後感のインパクトは絶大 

2007年に「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞した湊かなえは、翌年、同作を含む6章から成る最初の単行本「告白」を刊行。デビュー作にもかかわらず、週刊文春ミステリーベスト10で国内部門第1位に選出され、09年には第6回本屋大賞を受賞した。12年、単行本「望郷」の収録作「海の星」で第65回日本推理作家協会賞短編部門、16年「ユートピア」で第29回山本周五郎賞を受賞するなど、数々の文学賞を受賞している。

また、普遍的なテーマで読者の心を揺さぶる湊作品は、海外での評価も高く、「告白」の英訳は14年にアメリカで出版され、同年の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのミステリーベスト10にランクイン、15年には全米図書館協会アレックス賞を受賞。18年には「贖罪」が、米ミステリー界で最も権威のある賞で“ミステリー界のアカデミー賞”とも称されるエドガー賞の最優秀ペーパーバック・オリジナル賞の候補となった。

ミステリー小説では、いまやすっかりおなじみとなった“イヤミス”というワードがある。これは読んだ後に、胸がザワザワして、イヤな気分になる、後味の悪いミステリーのことを指す。このワードは書評家の霜月蒼が2007年1月号「本の雑誌」のコラムで用いたのが初出だとされているが、奇しくも同年に湊かなえが「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。そして、2008年の衝撃作「告白」が大ベストセラーになったことで、“イヤミス”という言葉が一気に広まった。いわば、湊かなえは“イヤミス”という言葉を一般的に普及させた立役者といえる。翌年、立て続けに刊行した「少女」、「贖罪」の読後感のインパクトも絶大で、湊かなえは“イヤミスの女王”と称されるようになっていった。

湊かなえ原作の映像化作品は映画、ドラマを含めて、とにかく多い。もはや映像化されていない作品のほうが少ないのではと思うほどである。“イヤミスの女王”という称号などには飽き足らず、精力的な創作活動を続けながら、作風をどんどん広げてきた湊だが、やはり緊迫した物語展開と強烈な印象を残すキャラクター描写は圧倒的で、そのどれもがクリエイターに「映像化したい!」と思わせる傑作ばかりだ。

教え子に娘を奪われた中学教師の復讐を描く『告白』

湊かなえ原作の映像化作品は、総じて完成度が高いことが特徴である。そのスタートをきった記念すべき作品が、大ヒット映画『告白』(10)だ。教え子に娘を殺された中学校教師が事件の真相に迫り、復讐を果たすまでを描く物語。『嫌われ松子の一生』(06)の中島哲也が監督と脚本を担当し、主人公の女性教師・森口役を松たか子が怪演(ちなみに森口の娘役は芦田愛菜)。本作は第34回日本アカデミー賞で4冠を達成し、興行収入38.5億円を記録した。教師と生徒の関係性を描いた作品でありながら、事件の背後にはさまざまな母と子の関係が大きな影響を及ぼしていたことも明らかになっていく。中島監督がこだわったという、結論を観客にゆだねるエンディングも記憶に残る。

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娘を殺された母親が、事件の真相に臨む『贖罪』

WOWOWの連続ドラマWで映像化された「贖罪」(12)の監督・脚本は『スパイの妻』(20)の黒沢清。小学生の娘を殺された母親と、事件を目撃した4人の同級生が、15年の歳月の後、引き起こす悲劇を描く。原作は「告白」と同じく章ごとに主人公が変わる独白形式で、ドラマは原作の章立てに沿った全5話で構成。各エピソードを5人の女性それぞれの視点から描き、微妙な差異を際立たせているのがポイントだ。娘殺害の真実に臨む母・麻子役を小泉今日子、償いの思いに囚われたまま大人になった4人の同級生を蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴が演じている。劇場での上映や、再編集版が、第69回ヴェネチア国際映画祭をはじめ、数々の国際映画祭で上映されたことも、テレビドラマとしては異例だった。


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