藤ヶ谷太輔、父親役の豊川悦司と「15年分くらい」一緒にこたつ!息ぴったりに撮影を回想
藤ヶ谷太輔主演映画『そして僕は途方に暮れる』(2023年1月13日公開)の完成披露試写会が12月5日にイイノホールで開催され、藤ヶ谷をはじめ、前田敦子、中尾明慶、香里奈、原田美枝子、豊川悦司、三浦大輔監督が登壇。何度もテイクを重ねる三浦組について、キャスト陣全員が現場の過酷さを告白。藤ヶ谷は「楽しい思い出が一つもない」と明かしながらも、そのなかで芝居ができたことについて「本当に幸せでした」と喜びをかみ締めた。
2018年に上演された三浦のオリジナル舞台を、三浦の監督&脚本、藤ヶ谷主演という再タッグで映画化した本作。藤ヶ谷演じるフリーターの菅原裕一が、ほんの些細なことから、恋人や親友、先輩、後輩、家族などあらゆる人間関係を断ち切っていく姿を描く逃避劇だ。ばつが悪くなるとその場しのぎで逃げだしてしまうクズ男を演じた藤ヶ谷は、「撮影は2年弱前。やっと皆さんに観ていただけると思うと、うれしい気持ちでいっぱいです」とにっこり。「俯瞰で(本作を)観ることはなかなかできなかった。でも観てくださった関係者の皆さんが笑ったりしていたので、一生懸命な滑稽さ、クズっぷりというのは笑えるんだなと改めて感じた」と完成した作品について語った。
撮影では「とにかくテイク数を重ねた」と振り返った藤ヶ谷。「モニターに映っている自分の表情を見た時に『自分ってこんな表情していたんだな。こういうお芝居をしていたんだな』というのを、そこで改めて感じました。監督に新しい一面を引きだしていただけた」と充実の表情を浮かべた。
三浦監督の現場は、その異様なまでのこだわりによってなかなかOKが出ないそうで、ステージでは三浦組の過酷さについて、それぞれが楽しそうに証言した。三浦監督が「本当にすみません」と謝るひと幕もあったが、本作の撮影中のエピソードを聞かれるた藤ヶ谷は「楽しい思い出は一つもない」と苦笑い。とはいえ「三浦さんの作る世界観が大好き」というだけに、「お芝居をやらせていただける環境という意味では、最高。すばらしいキャスト、スタッフの皆さんが支えてくださるなかでお芝居ができたことは、本当に幸せでした」と役者としてすばらしい経験になったと晴れやかな笑顔を見せていた。
裕一の父親役を豊川、母親役を原田が演じた。豊川は「父親役をやることが多くなったんですが、息子がいる父親役は初めてかもしれない」という。藤ヶ谷は「緊張ももちろんしましたし、刺激もたくさんいただきました。大先輩のお二人と三浦組を戦い抜いたことを誇りに思います。同じ時間を共有できたこと、お芝居をできたことがすごくうれしかったです」としみじみ。豊川との共演の思い出に関しては、「ずっとこたつに入っていましたね」と豊川と顔を見合わせてコメント。「なかなかOKが出ないので。いままでの人生で言うと、15年分くらいはずっとこたつに入っていた」と笑うと、豊川も「だんだん面倒くさくなって、テイクの合間にもずっとこたつに入っていました」と楽しそう。豊川は「アルフォートを100個くらい食べた。食べたよね」とお菓子に関する思い出も印象に残っている様子で、藤ヶ谷は「大先輩が100個ほど食べられていました」と息ぴったりに同調していた。
三浦監督からは「もしヒットしたら『2』があるかも」と続編を望む言葉も飛びだし、覚悟がいる現場が予想されることから「やったー」と弱々しく声を絞りだした藤ヶ谷。「人生を生きていくなかで逃げたいと思うこと、逃げたこと、逃げられなかったこともたくさんあると思います。裕一が逃げたその先がどうなっていくのかを、ぜひ見届けていただきたい。長く愛される映画になったらすごくうれしいです。長く愛してあげてください」と呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝