映画ファンが”2022年の一本”として挙げる『ある男』の特別な余韻「この作品にのめり込み、抜けだせなくなった」
平野啓一郎のベストセラー小説を石川慶監督が映画化した『ある男』(公開中)が、映画ファンのなかでじわじわ評価を伸ばし、ロングラン上映中だ。「期待以上すぎて余韻がすごい。俳優さんが全員上手なのでそれでまた箔がついた感じ!これは今年1かも!」などと本作を挙げる声も散見される。
第79回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に正式出品され、第27回釜山国際映画祭のクロージング作品として上映されるなど早くから世界の注目を集め、公開直後には第44回カイロ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門では最優秀脚本賞を受賞。国内の映画賞レースのトップを飾る第47回報知映画賞では作品賞を受賞、第77回毎日映画コンクールでは最多9部門にノミネートを果たすなど、今後の国内の賞レースを賑わすことも予想される。
そうした映画賞での評価はもとより、“ある男”の正体を暴いていくミステリーであると同時に、人間の本質を浮き彫りにする一級品の人間ドラマとして、“鑑賞後に誰かと話したくなる作品”として広まっていることがロングランの要因だろう。今回は、公開後にSNSで寄せられた映画ファンの感想から、その魅力を紹介したい。
妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝…実力派勢の名演に震える
弁護士の城戸(妻夫木聡)が、里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫“大祐”(窪田正孝)の身元調査をしてほしいという奇妙な相談を受ける。里枝は再婚した“大祐”と幸せな家庭を築いていたが、ある日“大祐”が不慮の事故で命を落としてしまった。長年疎遠になっていた“大祐”の兄・恭一(眞島秀和)が法要に訪れ、遺影に写っている男は「大祐ではない」と話したことから、愛したはずの夫が名前もわからない別人だったことがわかったのだ。城戸は、“大祐”として生きた“ある男”の正体を追い求めるうちに、ある真実に辿り着く。
実力派勢が顔を揃え、見応えのある演技合戦を堪能できる本作。主人公・城戸役の妻夫木は初の弁護士役に挑戦し、クランクイン前には、実際の裁判を傍聴したり、現役の弁護士に取材を重ねて入念な役作りを行なったという。城戸は“ある男”の正体を追い求めるうちに、自己存在の意味も問いかけていくようなキャラクター。妻夫木が城戸の繊細な心の動きを見事に演じきっており、グイグイと観客を映画へと引き込んでいく。
観客からは「脚本、構図、俳優陣どれをとっても素晴らしく見応えのある作品だった。セリフが少なくても、絵と演技で様々な感情が伝わる。俳優陣も、実在する人物をそのまま撮影したかのような演技でさすがだった」「子役含め皆自然で、実在感があった」など、キャラクターの“実在感”を称賛する声も多かった。
里枝役の安藤サクラは、幼い子供を病気で失う母親役として医学書や闘病記を読み込み、里枝という女性に寄り添いアプローチ。里枝の夫の大祐/“ある男”を演じた窪田正孝は、過去パートに向けて身体づくりとトレーニングに励み、フィジカル面での役作りにも奮闘したそう。「窪田さんは、なにを考えてあんな顔、あんな目をするんだろうか」と本作のミステリーを牽引する窪田の演技に驚いたという声も。
また詐欺師の男を演じた柄本明の怪演にも「柄本明さんの薄気味悪さは何度観ても堪らない」など多くの声が集まった。 「子役の坂元愛登くん、初めての演技とは思えない。これは最高のデビュー作になるんじゃないかな」「これだけ名優揃ってて一番の泣きは子役の子にもっていかれました」
などと称賛される、子役の演技にも注目してほしい。