【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」 第11回 あんな人こんな人
大人な対応をしてあ、げ、る、のは決して泣き寝入りなどではない
私は家に帰ってモヤッと考える。「私がひねくれているのか」「いや、あれはどう考えても引っかかる」「でも私の心が狭いのか」「あの人はどうしてあんな言い方になるのだろう」「私が繊細なのか」「あの時ああ言ってやればよかった」などなど。
そんなことで頭をいっぱいにしてしまう日は、「絶望名人カフカの人生論」を読むに限る。私はカフカが大好きだ。絶望名人カフカの、ネガティヴっぷりは世界で一番である。「ねえカフカ、聞いてよ」というふうに本を開けると、いつの間にやら「カフカよ、頑張れ」と言ってしまう自分がいる。自分の小さな絶望を、大きな絶望でそっと覆い被せる。そうすると不思議とエネルギーが、希望が湧いてくる。そんな方法もあるのだと、私は思った。
悪気がない、で済まされるのはいったいどこまでなんだろうか。一歩立ち止まって、数秒考えて、自分が今言おうとしていることは相手を不快にさせないだろうか。そんなことを考えるのは、確かに難しいのかもしれない。
特に仕事を隠してはいない私は、デビューしてからプライベートで会った人ほとんどに「AV女優です」と自己紹介をしてきた。それを聞いた反応は多種多様である。反応を伺って、「フンッ、なるほどね」なんて思っちゃいない。そこまでひねくれてはいない、はず。職業上仕方のないことなのだと思ってはいる。なかにはどんな反応をしたらいいのかわからない人もいて、戸惑わせて申し訳ないという気持ちだってある。ただもうウンザリなのである。
今までこちらを一つも見ていなかった女性が食い気味に「すごいすごいすごい、私はすごく良いと思う、否定するやつがいたら私に言ってね、ぶっ飛ばしてあげるから」と突然言った。なんだというのだ。私はなんだ、珍獣か何かか!?
言っておくがこの仕事を始めてから私の仕事を否定した"ぶっ飛ばしていただく必要のある"人はいない。そして「AV女優です」と言い終えないうちに「かっこいい女だね」と言われたこともあった。わけがわからない。私は頭の中で確認作業に入る。初対面で、この人は私のこともMINAMOのことも何も知らない。一体なーにがかっこいいのだろう。「教えてよん」と尋ねると「え、なんか」と返ってきた。なんか、とは…。
一番腹が立つのは「素晴らしい職業だし、僕は偏見なんてない。ただあなたの気持ちが心配」と言ってきた人。勝手に私を不幸だと決めつけたうえで、そんな不幸な私を励ます自分を頼んでもいないのに出してくる。気持ち悪いよアンタ。
大人な対応をしてあ、げ、る、のは決して泣き寝入りなどではない。「同じ土俵に立たない」ということである。「あ、今の言葉トゲがある」「私今すごく馬鹿にされている」。来世はそんなことがわからない、読み取れない人間になりたい。
京都府出身。2021年6月にSOFT ON DEMANDよりAV女優としてデビュー。趣味は映画&レコード鑑賞、読書。
YouTubeにて「MINAMOジャンクション」を配信中。
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