『聖闘士星矢 The Beginning』プロデューサーが語る、原作愛あふれる実写化への想い。新田真剣佑は「完璧なキャスティング」
「車田先生の意図を、きちんと伝えるという想いを強く持っていました」
1990年代初頭にアメリカで映画作りを学び、長年にわたり東映アニメーション作品と海外資本を結び付ける、国際的なプロジェクトを多く手掛けてきた池澤だが、なかでも本作がハリウッドでの実写映画化にまで漕ぎつけた背景について、原作者の車田先生の存在が大きいと強調する。「映像化の過程のなかでは、意図せず炎上が起きるようなこともありますが、そんな時でさえも『(それは結果だから)いいよ』と言ってくれるような寛大な方です。だからこそ、先生が意図していらっしゃることをきちんと伝えなければという想いを強く持っていました」。
配信サービスの台頭により、ハリウッドスターが揃った大作であっても劇場公開されずにストリーミングのみとなることも多い昨今。「コロナ後は『これ、配信でいいんじゃない?』という会話が作品を送りだす側から出てくることもあります。寂しさを感じる部分もありますが、こういった状況は世界的にそうなっているというのが実情です。とはいえ、今回のように、サウンドと一緒にアクションを体感しながら楽しむ作品はやっぱり映画館で観ていただきたい。劇場公開を予定して製作した作品でも、どんな出口になるかわからないことは、コロナ禍の経験で理解はしています。だからこそ本作は最初から『映画館で観てもらいたい』とずっと言い続けてきました。海外配給を担当していただくソニー・ピクチャーズ・ワールドワイド・アクイジションのご理解を得られたことにも心から感謝しています」と世界規模での劇場公開がかなったことに笑顔を浮かべる。
テレビの大型化などにより、自宅での視聴環境も飛躍的に向上した昨今。わざわざ映画館まで足を運ばせる作品に仕上げるためには、「映画でしか得られない価値観の提示が大事だと考えています。原作をなぞるだけではなく、ビジュアルやテーマで新しい価値観を提示することを心掛けています」と信念を語る。「実写化は数あるフランチャイズの一つという考え方ではなく、海外のスタンダードに乗れるクオリティの作品を目指すことが、いま我々がやるべきことだと考えています」と今後の世界展開への想いにも触れた。
取材・文/タナカシノブ