『ノック 終末の訪問者』では新境地も!元プロレスラー俳優、デイヴ・バウティスタの快進撃を振り返る

コラム

『ノック 終末の訪問者』では新境地も!元プロレスラー俳優、デイヴ・バウティスタの快進撃を振り返る

大作に引っ張りだこ!快進撃はまだまだ続く

その快進撃がスタートしたのは2010年代半ば。『007 スペクター』(15)ではボンドを狙う犯罪組織の怪力男ヒンクス役。ロジャー・ムーア時代のボンドの宿敵ジョーズを思わせる殺し屋だが、知的でリアルなキャラクター造形はダニエル・クレイグ版にぴったり。高級スーツに身を包んだジェントルな姿も映えていた。『ブレードランナー 2049』(17)で演じたのは、映画の冒頭で主人公を襲うレプリカントのサッパー。同じくドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)では邪悪な策士ハルコンネン男爵の甥の兵士ラッバーンを演じ、その獣性で観客を圧倒した。シルヴェスター・スタローン主演の脱出アクション『大脱出2』(18)、『大脱出3』(19)ではスタローン演じる主人公ブレスリンの友人デローサ役。派手なアクションは控えめで、ここいちばんで頼りになるベテランの仕事屋を渋く演じて存在感を見せつけた。いずれ「エクスペンダブルズ」シリーズにも参戦してほしいと切に願う。

『大脱出3』ではスタローンのよき相棒デローサに
『大脱出3』ではスタローンのよき相棒デローサに[c]Everett Collection/AFLO

フィリピンの格闘技カリの経験もあるバウティスタは、ジャン=クロード・ヴァン・ダムの出世作のリブート『キックボクサー リジェネレーション』(15)でムエタイの王者をクールに熱演。『ブッシュウィック -武装都市-』(17)では女子大学生と共に廃墟と化した街を放浪する兵士、『イップ・マン外伝 マスターZ』(18)では猪突猛進型の格闘家、ザック・スナイダー監督の『アーミー・オブ・ザ・デッド』(21)ではゾンビで埋め尽くされたラスベガスに潜入する傭兵と、その役柄はファイターが多くを占めている。そんなバウティスタは意外にコメディ映画でも活躍している。

元プロレスラーならではのマッチョぶりを存分に発揮した『イップ・マン外伝 マスターZ』
元プロレスラーならではのマッチョぶりを存分に発揮した『イップ・マン外伝 マスターZ』[c]Everett Collection/AFLO

『STUBER/ストゥーバー』(19)で演じたのはUberタクシーを使って犯人を追うロス市警の豪腕刑事ヴィック。視力低下に悩むヴィックと平凡な青年が二人三脚で事件に挑む正統派バディもので、コワモテだけど根はいい人というバウティスタらしさが活きている。やり過ぎ系CIAエージェントのJJと少女ソフィーの絆を描いたのは『マイ・スパイ』(20)。監視対象である9歳の少女に振り回される大男という設定はよくあるが、安易にドタバタ劇に走らずドラマで見せる展開も心地よく、続編も決定している。純コメディ作ではないが、ダニエル・クレイグ主演のシリーズ第2弾『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』(22)では「おっぱい」を連発するオタク気質のYouTuberデューク・コーディを演じ演技の幅を広げている。アクションスターがコメディに挑む図式はスタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーほか多くの前例があるが、作品の質という面で先人たちを上回っているバウティスタ。その作品チョイスも彼の人気の秘訣なのだろう。

『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』では富豪の友人に依存するYouTuber役
『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』では富豪の友人に依存するYouTuber役[c]Everett Collection/AFLO

そして今作の『ノック 終末の訪問者』でバウティスタが演じたレナードは、先に触れたように学校教師。筋骨たくましい体つき、半袖のワイシャツからタトゥーだらけの腕がのぞくいかつい系の大男だが、やわらかい物腰やいつくしむような眼差しは優しい先生そのものだ。彼と仲間たちがある目的のため、平穏に暮らす家族に“ある試練”を強いに行くという不条理な役柄ながら、「俺のようなタイプには滅多に回ってこない役」と語るバウティスタは説得力ある演技を披露。ミステリアスなレナードの心の闇の部分を含め、そのキャラクターにぐいぐいと引き込まれていくだろう。

ある家族に究極の選択を迫る大男レナ―ド役を説得力たっぷりに演じて新境地を開いた(『ノック 終末の訪問者』)
ある家族に究極の選択を迫る大男レナ―ド役を説得力たっぷりに演じて新境地を開いた(『ノック 終末の訪問者』)[c]2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.


3部作の最後を飾る『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(23)、サッパー・モートンの大暴れに期待の『Dune: Part Two』(23)と注目作が控えているバウティスタ。これが最後のドラックスと明言しているバウティスタが、盟友ジェームズ・ガンのDCユニバースに参戦するのかも気になるところ。今後の彼の動向からますます目が離せない!

文/神武団四郎

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