ジョン・カーペンターが明かす、45年引き継がれた恐怖の精神「マイケル・マイヤーズは悪の象徴で“邪悪”そのもの」
1978年に鬼才ジョン・カーペンターによって生み出されたホラー映画の金字塔『ハロウィン』。以後シリーズ化やリブートを重ね、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督による、第一作の40年後を描く新解釈の続編『ハロウィン』(18)はファンを大いに熱狂させた。同作の好評を受けて、グリーン監督は三部作を構想。2作目となった『ハロウィン KILLS』(21)では、より骨太なドラマを展開させ、次なる展開への興味を激しく高めた。そして、いよいよ完結編となる『ハロウィン THE END』(公開中)が日本に上陸した。
ドラマ性を重視するグリーン監督は、今回も主人公のローリー・ストロードをはじめとするキャラクターの内面を的確に描き出す。一方で、映画史に残るホラーアイコン“ブギーマン”ことマイケル・マイヤーズを、“恐怖の存在”として落とし込むことも抜かりない。かくして三部作はドラマチックなフィナーレを迎えるのだが、これを成功に導いた陰に、製作総指揮に名を連ねるのみならず、音楽も担当したシリーズの生みの親ジョン・カーペンターがいることを忘れてはならない。1978年の『ハロウィン』から45年、新トリロジーの完結を経て、いま彼はなにを思っているのだろうか。リモートインタビューで話を聞いた。
「“おじいちゃん”のように、この作品に関わろうと思いました」
『ハロウィンKILLS』で殺人鬼マイケル・マイヤーズが、再びハドンフィールドをパニックに陥れてから4年後。この事件で娘とその夫を死なせてしまったローリーは、生き延びた孫娘アリソンと共に静かな暮らしを取り戻しつつあった。4年前に父母を殺されたアリソンは、同じく当時の心の傷を抱える青年コーリーと恋を育んでいく。しかし、そのコーリーのハドンフィールドに対する怒りという負の感情が、衰弱していたマイケルを甦らせることに。ハロウィンの夜、40年以上にわたりマイケルに囚われ続けていたローリーは、すべてに決着をつけるべく、最後の対峙を決意する。
「製作総指揮」という仕事の内容は映画によって異なり、クリエイティブに関わることもあれば、単に資金集めのため名前を貸しているだけということもある。『ハロウィン』新三部作の場合、カーペンターが担った役割は前者に近い。「プロデューサーのジェイソン・ブラムから話をもらったことが、三部作に関わったきっかけです。私は“おじいちゃん”のように、この作品に関わろうと思いました。製作を見守り、何か困ったことがあれば助け船を出し、一方で作曲を手がける。これならば、私と新しい『ハロウィン』に適度な関係を築けると考えたのです。横から文句を言うような立場にはいたくなかったんですよ」。
「基本的にこちらからはなにも言わなかったのですが、意見を求められて『それは止めた方がいいんじゃないか?』と助言したことはありました。詳細について語るのは野暮ですが、ひとつだけ言えば、私の最初の『ハロウィン』でドナルド・プレザンスが演じたドクター・ルーミスを、当初は三部作で殺してしまうというアイデアがありました。私としては、それはグリーン監督の新解釈の『ハロウィン』にはふさわしくないし、観客にもよく思われないと考えて、止めた方がいいと伝えました。結果的に、別の俳優が演じたルーミスは2作目のみに登場する小さい役となり、彼の命は救われました。とはいえ、監督らが考えた当初の脚本はほぼ完璧だったし、私の意見はごく小さいものでした」。
グリーン監督は、そもそもコメディ畑の出身で、そこからドラマに進出し、『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』(17)のような感動作も手掛けている。ホラー映画はこの三部作が初めてだが、カーペンターは彼の才能を大いに買っている。「デヴィッドは才能あふれる監督です。共同脚本のダニー・マクブライドと共に、アップデートされた新しい『ハロウィン』の語り方を見つけています。彼らが作り出した『ハロウィン』は、私の最初の『ハロウィン』よりも奥行きがある。これは私としても誇らしいことです。『ハロウィン THE END』に関して言えば、前作とはまた違う角度からドラマを深化させていました。シリーズ物はマンネリ化しがちですが、これはすばらしいアイデアだと思います」。