『ちはやふる』から『ジョジョ』『るろうに剣心』まで…『聖闘士星矢 The Beginning』へと至る新田真剣佑の現在地を探る

コラム

『ちはやふる』から『ジョジョ』『るろうに剣心』まで…『聖闘士星矢 The Beginning』へと至る新田真剣佑の現在地を探る

親友、北村匠海との“思い”が重なるせつない青春ドラマ『サヨナラまでの30分』

サヨナラまでの30分』(19)で新田と北村はW主演を果たしたが、これはかなり異色の不思議な共演だった。新田が演じたのは、メジャーデビューを目前にして他界したバンド「ECHOLL」のボーカリスト、宮田アキ。北村が扮した窪田颯太は、そんな彼が遺したカセットテープを偶然拾ったことがきっかけで、そのテープが再生されている30分だけ“アキ”になり、一つの身体を共有することになる。そんな音楽にまつわる映画に未来を期待されていたボーカリストのアキ役で主演したら、当然歌わないわけにはいかないが、新田はそこにも果敢に挑戦!バンド「DISH//」でミュージシャンとしても活躍する北村にも負けない、色気のあるのびやかな歌声でアキを嘘のないキャラクターに。と同時に、颯太に託す恋人のカナ(久保田紗友)への愛も繊細に表現。親友の北村とだから“思い”を共有することができた、彼らの友情も感じさせる特別な映画に仕上がっていた。

復讐に燃える雪代縁を卓越した身体能力とにじみ出る狂気で怪演した『るろうに剣心 最終章 The Final』

そんな新田が自身のフィルモグラフィのなかでも最も強くアクセルを踏み込み、ポテンシャルを全開させたのが『るろうに剣心 最終章 The Final』(20)だったことは誰も認めるところだろう。本作では姉の雪代巴(有村架純)を死に追いやった主人公、緋村剣心(佐藤健)への憎悪に支配された上海の武器商人、雪代縁を驚愕の存在感で怪演!スタントマンの力を借りずに冒頭の登場シーンのアクションも自らこなすと、クライマックスでは卓越した身体能力で剣心とのスリリングなソードアクションを炸裂させて、観る者の目を釘づけに。縁の脳裏から離れない姉、巴に対する深い愛と彼女を失った悲しみ、剣心に対する激しい憎しみを全身から生々しくあふれさせて、縁を単なるヒールではない血の通った魅力的なキャラクターにしたのは新田の功績。それによって、映画の深みが増したのは疑いようのない事実だ。

剣心への復讐心をたぎらす雪代縁を怪演した『るろうに剣心 最終章 The Final』
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スピード感あふれる怒濤のアクションと日本映画で磨き上げた豊かな感情表現が必見の『聖闘士星矢 The Beginning』

聖闘士星矢 The Beginning』には、そんな新田の現時点でのすべてが注ぎ込まれている。オーディションで主人公の青年、星矢役を勝ち取った彼は、オープニングからとんでもないスピードの怒濤の肉弾戦を連続させると、女神アテナの生まれ変わりの女性シエナ(マディソン・アイズマン)を守る運命を受け入れ、厳しい修行に身を投じる星矢の成長を日本映画で磨き上げた豊かな感情表現で視覚化。スケールに限界がある日本映画では見せたくても見せられなかったアクションもまだまだあるし、謎の男アルマン・キドに扮した名優ショーン・ビーンと芝居を交わすシーンもあって、それだけで興奮してしまう。

だが、本作はあくまでも“The Beginning”。新田真剣佑の前には彼自身も予測できない未知の可能性が広がっている。

山崎賢人の「崎」は立つ崎が正式表記

文/イソガイマサト

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