『雄獅少年/ライオン少年』で果たした挑戦と未来を監督が明かす「新鮮味のある中国のアニメーションを提供できればうれしい」
「迫力あふれる獅子舞を描く秘訣は、ディテールを深く観察すること」
獅子舞のデザインは美麗で、獅子舞バトルも圧倒的な迫力がある。ソン監督は「獅子舞の勉強は、ゼロからのスタートでした」と回想。監督チーム、絵コンテチーム、アニメチームは、近隣の獅子舞チームから「獅子舞の特訓を受けた」のだとか。
躍動感あふれる獅子舞を描く秘訣について聞いてみると、「ディテールを研究すること」とにっこり。「とにかくディテールを観察しました。その観察が多ければ多いほど、臨場感につながると思っています。例えば獅子頭の複雑な構造や、獅子頭に付けられた大量の毛など、材質や動きに至るまで、詳しく観察しました。獅子舞の動きは、映画全体の精神表現にも影響する可能性があるので、とても力を使いました」と研究を重ねた。
獅子舞の動きだけでなく、チュンたちの住む田舎町の情景や、チュンが出稼ぎで訪れた都会の風景、キャラクターの心情と重なり合ったアクションシーンなど、あらゆるアニメーション独自の表現に挑戦している。チュンがビルの屋上で獅子舞をやった後に、都会の空気を感じながら両手を広げるシーンは、10時間ほどかけて、やっと1フレーム(1秒が24フレーム)が完成したという。大小様々なビルが並びそこから太陽の光が差し込むなど、たくさんのディテールが加えられているシーンとなるが、ソン監督は「このシーンは、技術的にものすごく難しかった場面です。この場面では、大きなビル群の前に、とても小さな身体のチュンが配置されています。あまりにも小さいために、PCで作業する時は気づきませんでしたが、大きいスクリーンに投影した時にチュンの身体がどうしても揺れてしまうんです。なんとか揺れないよう、最後の最後まで粘ってレンダリングを行ないました」。
さらに「クライマックスで、チュンが高い柱に飛びつこうとする瞬間は、自分にとってもとてもチャレンジングなシーンになりました」とソン監督。「このシーンは技術の難しさというより、デザインに関する難しさがありました。なぜかというと本当の獅子舞競技には、このような高い柱は存在しません。でも私は、チュンの成長を表現するためにも、ここで高い柱を登場させたいと感じていました。どうやったら違和感なく、実際はありえないものをそこに存在させることができるのだろうかと、長い時間をかけて考えていきました」と振り返るように、リアリティとダイナミックさが共存するアニメらしいシーンとして完成している。