見えた?見えない?世界が魅入った“足組み”…シャロン・ストーンが辿った『氷の微笑』からの30年

コラム

見えた?見えない?世界が魅入った“足組み”…シャロン・ストーンが辿った『氷の微笑』からの30年

世界中で社会現象を巻き起こしたエロティック・スリラーの金字塔『氷の微笑』(92)。マイケル・ダグラスが主演を務めた本作で、公開当時に一躍注目を集めたのは、主人公を翻弄する狡猾で妖艶な作家キャサリン・トラメル役を演じたシャロン・ストーンだ。本稿では、本作をきっかけにトップスターへとのぼり詰めた、ストーンの波乱に満ちた30年の足跡を振り返っていこう。

ヴァーホーヴェン監督の『トータル・リコール』で一躍注目を集めたシャロン・ストーン
ヴァーホーヴェン監督の『トータル・リコール』で一躍注目を集めたシャロン・ストーン[c]Everett Collection/AFLO

1958年生まれのストーンは、ファッションモデルとしてキャリアをスタート。ウディ・アレン監督の『スターダスト・メモリー』(80)に端役として出演し映画デビューを飾った。1980年代には『キング・ソロモンの秘宝』(85)やその続編、さらにスティーヴン・セガールの初主演作『刑事ニコ 法の死角』(88)などに出演するなどキャリアを重ねていき、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のヒット作『トータル・リコール』(90)でその名が知られるようになる。

この『トータル・リコール』を手掛けた鬼才ポール・ヴァーホーヴェン監督と2度目のタッグを組んだ『氷の微笑』で、ストーンのキャリアは大きく変わることになる。ちなみにキャサリン・トラメル役には、『ナインハーフ』(86)のキム・ベイシンガーや、ミシェル・ファイファーといった当時を代表するトップ女優たちや、ジュリア・ロバーツやメグ・ライアンら人気急上昇中だった面々が候補にあがっていたものの、全員がオファーを断ったことからストーンにチャンスが回ってきたという逸話も。

元ロックスターの男がベッドのうえで惨殺される事件が発生し、サンフランシスコ警察のニック・カランはその捜査に乗りだす。いくつかの不穏な痕跡から、事件当時のアリバイが不確かだった作家のキャサリンを尋問。ところが享楽的なキャサリンにニックは翻弄されていき、捜査は難航。そしてキャサリンの甘い罠に完全に落ちてしまったニックは、新たに起こる不可解な事件の数々に巻き込まれていくこととなる。

殺人犯か被害者か、男たちを翻弄していくキャサリンをヌードシーンもいとわない大胆な演技で表現したストーンは、本作でゴールデン・グローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)にノミネート。一気に女優としての名声を得たが、同時に“セックスシンボル”として、極端な注目をも集めることに。特に、いまなお彼女の代名詞と言える、尋問時の“足組み”のシーンは、“見えた”、“見えなかった”という話題が、男性客を中心に沸騰し、社会現象と言えるほどの注目を集めた。

本作後の1994年には、『わかれ路』(94)でゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)の最低主演女優賞、『スペシャリスト』(94)で同賞のワーストスクリーンカップル賞をダブル受賞。一方、マーティン・スコセッシ監督の『カジノ』(95)ではゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)に輝き、同年のアカデミー賞で主演女優賞にノミネート。たった2年のあいだに両極端な評価を獲得するほど、世間から注目を集めるトップ女優だったということだ。

足組みを超える“大開脚”?『氷の微笑2』で再び魅せた、48歳のフルヌードも話題に
足組みを超える“大開脚”?『氷の微笑2』で再び魅せた、48歳のフルヌードも話題に[c]Everett Collection/AFLO

それ以降もコンスタントに出演作を積み重ねていくストーンは2006年、『氷の微笑2』(06)を自らプロデュースし、キャサリン・トラメル役を再演する。ちなみに同作はダグラスをはじめとした1作目のキャスト陣が軒並み出演を拒んだことでも知られ、案の定ラジー賞では最低作品賞を含む4部門を受賞。ストーンも最低主演女優賞を12年ぶりに受賞することに。この失敗を受けた『ラルゴ・ウィンチ 裏切りと陰謀』(11)では、様々な映画でパロディされてきた『氷の微笑』の伝説的な“足組み”をセルフパロディに。そういった開き直りぶりも好意的に受け止められ、次第に大女優としての貫禄を携えていく。

近年では、『ラヴレース』(12)でアマンダ・サイフリッドが演じた実在のポルノ女優リンダ・ラヴレースの母親役を演じ、ジェームズ・フランコ監督&主演の『ディザスター・アーティスト』(17)、スティーヴン・ソダーバーグ監督の『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』(19)など、主演作こそ少ないものの、映画のみならずテレビシリーズ、MVに至るまで、彼女へのラブコールは絶えることがない。

Netflixシリーズ「ラチェッド」ではドクターに恨みを抱く裕福な女性を演じる
Netflixシリーズ「ラチェッド」ではドクターに恨みを抱く裕福な女性を演じる[c]Everett Collection/AFLO


2020年には、名作『カッコーの巣の上で』(75)でルイーズ・フレッチャーが演じた看護師長ミルドレッド・ラチェドの前日譚を描いたNetflixのドラマシリーズ「ラチェッド」にも出演。同作では、オリジナル映画の製作を務めたマイケル・ダグラスが製作総指揮として参加しており、ダグラスとストーンが久々に同じ作品で名を連ねたことも話題に。

また近年ではチャリティ活動に積極的に参加したり、2021年には回想録「The Beauty of Living Twice」を出版するなど、様々な面で輝きを放つストーン。現在公開中の『氷の微笑 4K レストア版』では、ハリウッド屈指の才女としても知られる彼女の出世作を、鮮やかな画質で堪能できる。その姿をスクリーンで目に焼き付けたあとは、ストーンが辿ったその後の足跡もチェックしてみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

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