『ローマの休日』『さらば青春の光』…イタリアの“アイコン”となったスクーター、ベスパの映画での活躍を振り返る!

コラム

『ローマの休日』『さらば青春の光』…イタリアの“アイコン”となったスクーター、ベスパの映画での活躍を振り返る!

モッズの象徴!『さらば青春の光』には改造ベスパが登場

モッズの象徴となったベスパは、ミラーとライトでのカスタムが定番だった(『さらば青春の光』)
モッズの象徴となったベスパは、ミラーとライトでのカスタムが定番だった(『さらば青春の光』)[c] World Northal/courtesy Everett Collection

『ローマの休日』と並び、ベスパが印象的な映画といえば『さらば青春の光』(79)だろう。本作は、ザ・フーによるアルバム『Quadrophenia』をモチーフに、1960年代イギリスに流行した“モッズ”と呼ばれる若者たちの青春を描く。

スティング演じるエースの愛車として輝きを放った(『さらば青春の光』)
スティング演じるエースの愛車として輝きを放った(『さらば青春の光』)[c] World Northal/courtesy Everett Collection

モッズカルチャーの一つにスクーターのカスタムがあり、ランブレッタやベスパといったイタリア車にライトやバックミラーをたくさん装着したものが大流行。そもそもトラディショナルな社会に反抗するモッズの若者たちは、イタリアの細身でイケイケなスーツを好んで着用し、スクーターもスーツにマッチするようにイタリアのものを好んだのだとか。

『さらば青春の光』で主人公のジミー(フィル・ダニエルズ)が乗っているのはランブレッタだが、モッズ界のカリスマであるエース(スティング)の愛車として銀のベスパが登場する。このベスパ、ラストで愛車を事故で失ったジミーに盗まれると、崖から海に投げ捨てられるハメに…。ジミーのモッズとの決別を示す重要なシーンだった。

1950年代のロンドンを舞台とした『ビギナーズ』でも登場する
1950年代のロンドンを舞台とした『ビギナーズ』でも登場する[c]Orion Pictures/courtesy Everett Collection

イギリスのモッズカルチャーという観点で言えば、1958年のロンドン・ソーホーを舞台とした『ビギナーズ』(86)でもモッズの象徴としてベスパが躍動。しかしクライマックスでは、ジャズなどの黒人カルチャーを愛するモッズに憎悪を抱くファシストたちの手によって、ベスパは無残にも燃やされてしまうのだった。

『アメリカン・グラフィティ』のなぜか心に残るあのシーン

1950年代からはヨーロッパだけでなく、世界中で生産、販売されていったベスパ。1962年のカリフォルニア州モデストの街を舞台に、旅立ちを控える若者たちのとある一夜を活写した名作『アメリカン・グラフィティ』(73)にも登場している。

『アメリカン・グラフィティ』では冒頭にさりげなく登場する
『アメリカン・グラフィティ』では冒頭にさりげなく登場する[c]Everett Collection/AFLO

映画のオープニング、車を持っていない主人公の一人、テリー(チャールズ・マーティン・スミス)は、ベスパに乗って溜まり場のドライブインレストランにやってくるが、操作を誤りゴミ箱に激突してしまう。なにげないシーンだが、テリーの鈍臭さを表したなんとも印象に残る一幕だった。


「探偵物語」でのポンコツぶりがかわいらしい!

日本の作品では、映画ではないが松田優作が主演を務めたテレビドラマ「探偵物語」のなかで、主人公の工藤の移動手段として白のベスパが登場する。

変な音と黒煙を上げながら走ったり、大事なところで止まってしまったりと工藤からもポンコツ呼ばわりされていたこのベスパ。一方、運転している工藤もうまく停車できずに壁にぶつけてしまったり…どこかお茶目な工藤のキャラクターにぴったりのバイクだった。

『アルフィー』ではプレイボーイの象徴として登場
『アルフィー』ではプレイボーイの象徴として登場[c] Paramount/courtesy Everett Collection

『トランスフォーマー/最後の騎士王』でのかわいいベスパのオートボット
『トランスフォーマー/最後の騎士王』でのかわいいベスパのオートボット[c] Paramount Pictures /Courtesy Everett Collection

時には『アルフィー』(04)でおしゃれなプレイボーイを象徴するアイテムとなり、かたや『デッドプール2』(18)でギャグ的な使われ方をし、『トランスフォーマー/最後の騎士王』(17)ではかわいらしいオートボットになり…と、実に1400以上の作品で登場してきたというベスパ。

時代やその土地の文化を示すアイテムとして使われたり、キャラクターの個性を表現するために使われたり、単なる移動手段以上の意味が込められた、まさにアイコンと呼べる乗り物なのだ。

文/サンクレイオ翼

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