観て楽しむ、味わって楽しむ映画たち…カクテルバー「八月の鯨」でとっておきの1本を味わおう!
●恐ろしくもかわいらしいパールから目が離せない『Pearl パール』
『X エックス』(22)に登場した最高齢のシリアルキラー、パールの始まりを描いた『Pearl パール』(23)。スターのいる華やかな世界に焦がれるパール(ミア・ゴス)は、体の不自由な父と厳しい母親と共に農場で暮らしている。ある日、ショーのオーディションが開催されることを知ったパールは参加を望むが、母に諌められたことで彼女のなかに眠る狂気が目覚めてしまう。
フランスの修道院で作られるリキュール“シャルトリューズ”をベースに、スパークリングワイン、カシス、レモンで構成され、フォークに刺さったマシュマロが添えられた『Pearl パール』のカクテル。パールの容姿と、奥に潜んだ狂気が表現されていた。ドリンクに添えられているマシュマロは、映画の冒頭でパールが農具で殺したガチョウを表しているとのこと…。
●海外の人にも愛されるジャパニーズ・ホラー『リング』
ジャパニーズ・ホラーを代表するホラーアイコン“貞子”。鈴木光司の同名小説を原作とした『リング』(98)は、そんな貞子が人々を恐怖に陥れる様を描いた。観た者を一週間で死に至らしめる“呪いのビデオテープ”の調査を始めた主人公たちが、呪いの元凶が井戸で殺害された山村貞子にあることを突き止める。
ブラヴォドウォッカ(ブラックウォッカ)をベースに、リコリスのリキュール“リカール”、烏龍茶で作られたカクテルを、井戸を想起させる和風の湯呑みで楽しむことができる。黒い色のウォッカ、烏龍茶といった爽やかさとは正反対の色合いのドリンクによって、『リング』ないし貞子の纏うおどろおどろしい雰囲気が見事に再現されている。『ミッドサマー』同様ハーブのお酒を使用しているので少しクセがあるが、烏龍茶によってさっぱりとした味わいになっている。
“グラスホッパー“と聞いてあなたが思い浮かべるのは?
映画のタイトルのなかには、カクテルと同じ名前を持つものがある。代表的なものでは『ゴッド・ファーザー』(72)や『カサブランカ』(46)など。今回は、“バッタ”を意味するカクテル「グラスホッパー」をご紹介する。
本来の「グラスホッパー」は、鮮やかな緑色が特徴的なカクテル。ミントリキュールに生クリーム、カカオリキュールが合わさった、チョコミントのような味わいの甘いカクテルだ。生クリームによってまろやかな舌触りとなっており、デザート感覚で楽しむことができる。
そして、伊坂幸太郎の小説を原作としたサスペンス映画の名前も同じく『グラスホッパー』(15)。婚約者をある事件で失い、復讐のため裏社会に飛び込んだ鈴木(生田斗真)、人を殺すことにためらいのないナイフ使いの殺し屋“蝉”(山田涼介)、特殊能力によって対象者を自殺に至らしめる殺し屋“鯨”(浅野忠信)の3人の人生がはからずも交錯していく様が描かれた。
山田涼介が演じた殺し屋“蝉“をイメージしたというカクテルは、ピカソやダリが愛飲していたリキュール“スーズ”(『ミッドナイト・イン・パリ』にも登場!)に、もみの木のリキュール“サパン”、レモンジュース、ザクロのシロップ、トニックウォーターを加えたもの。蝉の身を包む派手な黄色い服に、血しぶきが飛んでいるシーンを血に見立てたザクロ、ブルーベリーで彼が部屋で飼っていたシジミが表現されている。やはりハーブ系のリキュールが使用されていることもあり、清涼感抜群の口当たりだ。