『怪物の木こり』では亀梨和也が怪演…『ミュージアム』カエル男に『IT』のピエロなど映画に登場する“ヤバい“サイコパスたち!
狂気をはらんでいる精神科医『羊たちの沈黙』&『ハンニバル』レクター
トマス・ハリスのベストセラーの映画化で、プロファイリングを導入したサイコスリラーの先駆けでもあるサイコパスの金字塔『羊たちの沈黙』(91)。作品、監督(ジョナサン・デミ)、主演男優、主演女優、脚色(テッド・タリー)と主要5部門でオスカーに輝いた。女性の生皮を剥ぐ連続猟奇殺人事件を追うFBIの訓練生クラリス(ジョディ・フォスター)は、犯人逮捕のため監禁中の凶悪殺人犯ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)の心理分析を試みる。
レクターは元精神科医で、自分の患者を含む10数人を殺して食べた男。頭脳明晰、狡猾で危険なために監視体制も別格。移送時にマスクを含む拘束衣で、ミイラのように固定された姿も話題を呼んだ。圧巻なのはクラリスとの面会シーンで、レクターは射るような視線でクラリスを見つめ性格を細かく分析。口調はあくまで紳士的だが、存在しているだけで不気味なオーラを放つ怪物級のサイコパスだ。続編である『ハンニバル』(00)では残酷描写を満載し、レクターの狂気をストレートに描いた。
快楽殺人者『死刑にいたる病』榛村大和
『凶悪』(13)や『孤狼の血』(18)などの話題作で知られる白石和彌監督が櫛木理宇による同名小説を映画化したミステリー『死刑にいたる病』(22)。24人もの殺人で死刑宣告を受けた榛村大和(阿部サダヲ)は、1件だけ冤罪があるので調べてほしいと知人の大学生・雅也(水上恒司)に手紙を出す。直接的な描写はほとんどないが、白石監督作だけに拷問シーンの壮絶さは圧巻。
榛村の怖さは几帳面な性格にある。被害者は17歳か18歳のまじめそうな高校生の少年少女。目を付けると偶然を装いながら時間をかけて関係を築き、頃合いを見計らい睡眠薬を使って誘拐。小屋に監禁し時間をかけてじっくり拷問を繰り返し、死体は同じ方法で処分する。罪悪感はゼロ、裁判でも犯行は自分に必要な行為だと断言し、よどみなく胸の内を語る姿には背筋が寒くなる。さらに彼には洗脳という奥の手も持っている。
サイコパスに共通する恐ろしさとは?
サイコパスの怖さは、彼らを理解できないこと。自分のルールに従い生きる彼らは、常識や決まりごとが一切通じず、予測も不可能。それぞれの物語では、そんな彼らにどう立ち向かうかがキモになる。狙われる側がサイコパスという、かつてない展開を見せる『怪物の木こり』で、サイコパス弁護士・二宮はどう連続殺人鬼に立ち向かうのか。なぜ二宮が狙われたのか。そしてプロファイラーの戸城はなにを暴きだすのか。じっくりと味わってほしい。
文/神武団四郎