大沢たかおと原作者・かわぐちかいじが語り合う、『沈黙の艦隊』実写化への道のり「漫画にはない映像の力と“圧”を感じた」

インタビュー

大沢たかおと原作者・かわぐちかいじが語り合う、『沈黙の艦隊』実写化への道のり「漫画にはない映像の力と“圧”を感じた」

「漫画にはない映像の力、肉体性に伴うう“圧”というのをすごく感じました」(かわぐち)

――大沢さんが演じた海江田をご覧になった感想を教えてください。

かわぐち「大沢さんの海江田はとてつもないオーラや魅力を感じさせるものになっていて、海江田が動くと周りの人間たち、やまとの乗員はもちろん、動向を見る政治家などのキャラクター全員が生き生きするんですよ。これは映画を観ていてよく伝わってきたので、おもしろいなと思いましたね。あとは肉体性です。僕が描くのは二次元の世界ですが、漫画にはない映像の力、実際の“もの”がある肉体の力やそれに伴う“圧”というのをすごく感じましたね。特に海江田は動かない役だから難しかったんじゃない?」

核ミサイルを積んで逃亡を図った海江田の目的とは…
核ミサイルを積んで逃亡を図った海江田の目的とは…[c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

大沢「とても難しい役でした。いままで30年、いろいろ演じさせてもらいましたが、トップ中のトップぐらい難しい人物ですね。それは劇中の言葉とかに出ていない、いろんなものが海江田の頭の中にはあるからです。これはもの凄く強大なもので、だからこそ根を張りながら、いまの時代に合った作品にしなきゃいけないというのがあり、これが結構難しいことなんですよね」

かわぐち「やまとの乗員は全部で76人いるんですが、それを海江田が引っ張っていくわけで、乗員は事故で死んだことになっている。そんなトリックを使って一度アメリカに所属しつつも、原子力潜水艦を奪って行動に移す。これに乗員全員が従うわけです。ここは、漫画を描いている時に一番難しかったんですよ。普通だったら誰かが不満を漏らすみたいな、人間の組織であれば当然起こりうるマイナス部分が存在しないと、リアリティを感じないと思うんですよ。マイナスなことが起こらないなりのリアリティをきちんと構築しないと、やっていることが嘘になってしまうんです。海江田は、乗員たちを信じさせる力、カリスマ性ともいえるものを持っていて、ここがリアリティを構築する部分に繋がっています。そして大沢さんの演じる海江田にもそれがしっかりあって、この作品の一番の大きな力なのだと思いました。だから、大沢さんも海江田を演じ切ったという手応えがあったのではと感じますね」

撮影現場にかわぐちも訪問し、「海江田がここにいた」と思ったという
撮影現場にかわぐちも訪問し、「海江田がここにいた」と思ったという[c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.


大沢「実はうまく演じられたかどうかは、自分ではいつもわからないんですよね。もちろん自分の演技に納得したこともないし、毎日『違ったかな』と反省しながら家に帰って、次の日の調整をして、翌日また現場に入ります。これは一つのプロジェクトが終わるまで延々と続いていきますね」

――この反省と調整については、どのような想いで行ったのでしょうか?

大沢「多くの映画では主人公が成長していくという物語になっていますが、今作では登場人物のみんなが主人公で、海江田の行動によってパニックに陥り、日常から非日常に引きずり込まれて、そこでなんとか混乱する状況を抑止しようという人たちの話となっています。これは、いままでのエンタテイメントに無かった構造を持っているのだと思います。昨今、時代が大きく変わりいろんな構造が変わってきたなかで、僕はやっぱりエンタテイメントも変わってきていると感じているし、映画の構造も変わっていかないといけないと思っています。こんな大作で、しかも歴史的に人気のある原作を使って新たな挑戦をして良いかはわからないのですが、徹底的にやることでこれからの時代のエンタテイメントの一つの提唱になるんじゃないか、という想いはありました」

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