森崎ウィンが『ザ・クリエイター/創造者』に感じたアジアへの愛と可能性!「未来予想図を見ているような感じ」
『GODZILLA ゴジラ』(14)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)のギャレス・エドワーズ監督のSFアクション『ザ・クリエイター/創造者』が公開中。社会にAIが浸透した近未来を舞台に、心に傷を抱えた兵士とAI少女の交流を描いた本作を「観るべき未来予想図」と推すのが、俳優・アーティストとして活躍している森崎ウィンだ。スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(18)でハリウッドに進出し、大河ドラマ「どうする家康」や「ブラックファミリア~新堂家の復讐~」「パリピ孔明」など話題作への出演が続く森崎に、本作の見どころを語ってもらった。
舞台となるのは、人類とAI搭載ロボットが対立する21世紀半ば。ロサンゼルスでの核爆発を機に、アメリカを中心にした西側諸国はAI撲滅を宣言し、人類とAIが共生している“ニューアジア”に攻撃を行っていた。元特殊部隊の兵士ジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、AI開発者“クリエイター”を暗殺する部隊に加わり、ニューアジアに潜入。戦闘で部隊とはぐれた彼は、クリエイターが開発した少女の姿をした超進化型AIアルフィー(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)と出会う。死んだはずの妻マヤ(ジェンマ・チャン)がニューアジアで生きているという情報も得たジョシュアは、アルフィーを連れて妻の行方を追う旅の途中で、かつての戦場を共にしたAIのハルン(渡辺謙)と再会する。
「いろんな文化が混在した地域としてのアジアを描いているのがうれしかった」
映画を観終えて、「これって今後起きるかもしれない世界規模の戦いじゃないですか?すごい映画を作りましたね!」と驚きを隠さない森崎。ミャンマー出身の彼の心に刺さったのは、物語の舞台となるニューアジアの世界観だった。「“ニューアジア”ってネーミングがぶっ飛んでいるなと思いつつ、ボーダーラインをなくして、いろんな文化が混在した地域としてのアジアを描いているのがうれしかったです。日本語がたくさん出てくるし、日本代表として渡辺謙さんが出ていることにもすごく勇気をもらいました。ミャンマーが出てこなかったのは残念ですけど、逆に僕が頑張ってミャンマーの文化を広めなきゃという気持ちになりました」。
映画はネパール、インドネシア、カンボジアや東京でも撮影された。アジアならではの静かで幻想的なローケーションも見どころの一つ。森崎は「空や海、緑などアジアを象徴する色彩まできちんと再現されていました。だからかミャンマーみたいな雰囲気も感じられました」と振り返る。
「映画のなかで見せる表情も自然で特に笑顔がやばい」
本作のキーパーソンが少女の姿をしたAI、アルフィーだ。そのあどけない外見とは裏腹に、人類を滅亡させる力を持つというAI勢の秘密兵器。彼女をただの機械だと蔑んでいたジョシュアだが、豊かな感情を持つことを知り、感情に変化が芽生えていく。アルフィーを演じたのは、これが映画初出演のマデリン・ユナ・ヴォイルズ。ドイツ系の父と東南アジア系の母を持つ米国人で、森崎はその澄んだ瞳に惹かれたという。「目がすてきすぎですね。両親がドイツ系と東南アジア系という彼女の独特の雰囲気も、役にぴったりで最高でした。映画のなかで見せる表情も自然で、特に笑顔がやばい。あの笑顔でどれだけの人が泣いちゃうかってくらい。どうやってあの表情を引きだしたんだろうとか、めちゃめちゃ想像させられました」。
ニューアジアで暮らすAIたちは、醸しだす雰囲気もどこかアジアンテイスト。森崎は衣装や仕草も重要な役割をしていたと指摘する。「着ている服や顔がすごくアジアっぽいんですよ。寺院にいるAIロボットが袈裟を着ていたり、おばあちゃんが死んだAIを見つめるシーンも印象的でした。AIたちのCGはモーションキャプチャだと思いますが、アジア系の方が演じたんじゃないでしょうか」。
「ひとつひとつの乗り物や警官ロボットの顔のデザインもすごく僕の好み」
そんなAIを根絶やしにするため、アメリカ軍は軌道上に浮かぶ攻撃基地ノマドでAIの潜伏する地域を次々に爆撃していく。「ノマドの空爆シーンはド派手な見せ場でした。ほかにもひとつひとつの乗り物や、警官ロボットの顔のデザインもすごく僕の好みです。『AKIRA』っぽいバイクもかっこよかったし、もうすぐ実現できるんじゃないかなと思えるくらい機能的にもリアル。基地としてだけでなく、コロニーみたいに菜園のような空間もあるノマドのビジュアルは完全に、『機動戦士ガンダム』を感じさせますよね。観ていてすごくワクワクしました」と熱く語った。
ミャンマー生まれの俳優。2018年、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』で主要キャストに抜擢されハリウッドデビューを果たす。その後も映画やドラマ、ミュージカルなどで活躍。2020年に映画『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。また、主演した連続ドラマ『本気のしるし』では釜山国際映画祭2021のASIA CONTENTS AWARDSで「Best Newcomer-Actor賞」を獲得し、劇場版は第73回カンヌ国際映画祭「Official Selection2020」に選出された。2023年にはNHK大河ドラマ『どうする家康』で二代将軍の徳川秀忠を演じ、またMORISAKI WINとしてメジャーアーティストデビューするなど、エンタテインメント界で多彩な才能を発揮している。