「映画を愛することで、すべてが吹き飛んでいく」巨匠チャン・イーモウが語る、映画づくりの作法と高倉健との思い出

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「映画を愛することで、すべてが吹き飛んでいく」巨匠チャン・イーモウが語る、映画づくりの作法と高倉健との思い出

娘も息子も映画監督に。「家中が監督だらけになってしまう」

「実は『満江紅(マンジャンホン)』には、長男が少しだけ出演しています。彼は南カリフォルニア大学で映画を勉強しており、現場に実習に来たので少しだけ登場する役を演じてもらいました。長女はすでに映画監督として活動しており、長男は大学を卒業後はアニメ監督の道に進むそうです。妻からは『子どもたちみんなに映画をやらせては家中が監督だらけになってしまう』と言われてしまいました。『私はどの現場を見に行けばいいの?』とも言っていましたね。

子どもたちが続々映画界に!まるでアジアのコッポラ家
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長男は小さい時によく私の撮影現場を見学しに来ていたので、卒業するときの実習で実写作品を作った時には影響を受けてくれたと感じていたのですが、私はアニメのことを正直なにも知らなくて。実写作品だったら手伝うことができたのですが…。彼は日本のアニメをよく知っています。逆に私は宮崎駿監督しかわからない。最近は中国にもどんどん日本のアニメが入ってきて、日本と同時期に公開する作品もたくさんあります。例えば新海誠監督の作品は特に人気です」

長年映画づくりを続けてきたエネルギーの源となっているものは?

「それは映画を熱愛することだと思います。映画を愛することで、疲れや苦労などあらゆるものがすべて吹き飛んでいきます。40年前にこの世界に飛び込んだ時には、どこの大学でもいいから就職さえできれば自分の運命を変えられると考えていました。でも業界に入って作品を手掛けるうちに映画に対する愛情が高まり、映画の大ファンになっていきました。

映画監督として続けていくために大事なことは3つあります。まずは健康な状態を維持しなければいけない。体力がなによりも大事で、体を鍛える必要がある。だから私はタバコやお酒を一切口にしません。健康な体こそ、映画づくりの重要な資本なのです。


2つ目は、映画を撮るためには様々な人に投資をしてもらう必要がある。芸術家として映画を撮るのも悪くありませんが、映画という芸術は誰かの投資がないと成り立たない。だから投資をしてくれる人に対して責任をもって映画を撮る必要がある。毎回赤字では投資者は現れなくなり、映画が撮れなくなってしまうでしょう。でも商業映画だからと妥協してはいけません。責任をもって損させない映画を作りあげる。そして3つ目は、間違いなく脚本です」


取材・文/久保田 和馬

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