トニー・レオンが東京国際映画祭に登場!ウォン・カーウァイ、ホウ・シャオシェンとの秘話を語る
第36回東京国際映画祭で26日、「ワールド・フォーカス」部門の特集「アジアン・シネラマ -香港フォーカス」にてウォン・カーウァイ監督の『2046』(04)が上映。その上映後に、同作で主演を務めたトニー・レオンが「マスタークラス」と題したトークショーを行ない、ウォン・カーウァイ監督や先日引退が報じられた台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督とのエピソードなど、自身のこれまでの俳優活動を振り返った。
『グランド・マスター』(13)以来およそ10年半ぶりの来日になったというアジア屈指の名優の登場に、会場となったヒューリックホール東京に集まった900名近くの観客からは大きな拍手と黄色い声援が巻き起こる。まずトークは、トニー・レオンの名を一躍世界に知らしめたホウ・シャオシェン監督による台湾映画の傑作『悲情城市』(89)に出演するに至った経緯から語られていく。
「『悲情城市』の撮影現場が、その後の演技に大きな影響をもたらした」
「当時はまだ映画に出演するようになって間もない頃でした。私自身、色々な映画に出演して多くの監督たちと仕事がしたいと思っていたタイミングで、ホウ・シャオシェン監督からお声がかかり、これは良い経験になると感じて引き受けることにしました。出演に当たっては、まず台湾の歴史について勉強しなくてはならず、監督から指示されたたくさんの本を読み、準備を進めていきました。
私は劇中で使われた台湾語を喋ることはできません。すると監督は、私の演じる役をしゃべることができない男に設定してくれました。ただそうするだけでなく、監督はご友人のアーティストの方で、事故によってしゃべることができなくなった方を紹介してくださいました。台北から6時間かけて、彼のいる台南まで会いに行き、表情や仕草、しゃべることができない人の気持ちを学び、理解していきました。さらに準備段階で、できるだけ自分を孤独な環境に追い込もうと、ホテルにこもって本を読むようにしていました。
この映画に出演したことで、私は初めて経験したことがたくさんあります。まずアート映画がどのように作られているのかを知ることができました。演技を学んでいた時代から、外国のアート映画はたくさん見てきましたが、どう作られるのかまでは知りませんでした。そして自分を追い込む過程のなかで、孤独になって本を読み、文学作品から多くのものを得ることができました。人物の情感が丁寧に描かれており、私のなかの文学やアートに対する認識を深めることにつながったと感じています。
そして撮影現場には、プロの俳優以外の方々がたくさん参加されており、彼らの演技を見た時に衝撃を受けました。皆さんとてもリアルな演技をされていて、それを見るうちに自分の演技に疑問を抱くようになりました。私は彼らと同じように自然体な演技ができるのだろうか?それがその後の私の演技に大きな影響をもたらすこととなったのです」