亀梨和也がキャリアを重ねて出会った“サイコパス役”『怪物の木こり』運命の役に辿りつくまでの軌跡
2019年の第17回「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた倉井眉介の同名小説を、三池崇史監督が映画化した『怪物の木こり』(公開中)。先の読めないハラハラドキドキする展開と手加減なしの殺戮描写で観る者を圧倒する本作で、殺人犯をも凌駕する最凶のサイコパスをクールに演じた亀梨和也が大きな話題を集めている。
そこで本コラムでは、これまでにも多彩なキャラに挑み、観客たちを驚かせてきた俳優としての亀梨をいま一度チェック!亀梨の新境地とも言える、最強のヴィランへのプロセスを追いかけたい。
青春ドラマで、爽やかだが複雑な男子高校生を好演
亀梨は、2001年に「KAT-TUN」を結成する以前の1999年に、「3年B組金八先生 第5シリーズ」で俳優デビュー。2005年のドラマ「ごくせん」の第2シリーズで同じ生徒役の赤西仁とともに注目を集め、2009年に『ごくせん THE MOVIE』で映画初出演を飾った。
さらに、2005年に放送されたテレビドラマ「野ブタ。をプロデュース」では、内気な女子高生である信子(堀北真希)を、山下智久が演じた彬と一緒に学校の人気者へとプロデュースする修二を好演。学校内の人気者としての自分を偽りながら暮らしてきた修二が、ヤンキーに絡まれていたクラスメイトを助けなかったために孤立していく感じや、信子や彬との関係性の変化などによって抱える空虚な心を繊細に体現して、視聴者の共感を呼んだのも印象に残っている。
難役に挑戦し、演技の幅をグッと広げる
そんな亀梨が、確かな演技力と表現の多彩なバリエーションを印象づけたのが2013年の単独初主演映画『俺俺』だ。本作は “オレオレ詐欺”をしたのをきっかけに主人公の青年、永野均と同じ容姿をしているのに性格が違う「俺」が増殖し、やがてお互いを削除するようになるという異色のサスペンス。荒唐無稽な設定を成立させなければいけなかったわけだが、亀梨はこの高度なミッションを難なくクリア。永野と「冷静な会社員の大樹」と「チャラい大学生のナオ」を軸に、「ミリタリーマニアの俺」「巨乳の俺」「全身タトゥーの俺」など全33パターンのキャラを、衣装やヘアメイクの違いだけではなく、物腰や喋り方などを柔軟に変えながら演じ分けて観る者を驚愕させた。
一方、戦前のカナダで活躍した日系移民の野球チームの実話を『舟を編む』(13)、『月』(23)、『愛にイナズマ』(23)などの石井裕也監督が映画化した2014年の『バンクーバーの朝日』では、小学6年生のときに軟式野球の世界大会に主に投手として出場したこともある亀梨の野球の実力が炸裂。エースピッチャーのロイ永西に扮した彼の豪快な投球フォーム、うねりを上げる本物の剛速球が映画に説得力をもたらし、その一方では、バントと盗塁だけで1点をとったキャプテン、レジー(妻夫木聡)の意図をただ一人読み取り、ニコリとする芝居でロイのズバ抜けた野球脳を表現。そこから、どこか孤独な彼がチームメイトとの絆を深めていくニュアンスも丁寧に紡ぎ上げ、観客の胸を熱くさせた。