亀梨和也がキャリアを重ねて出会った“サイコパス役”『怪物の木こり』運命の役に辿りつくまでの軌跡
演技力だけでなく、高い身体能力で魅せる
こうして、高い身体能力と豊かな演技力で脚光を浴びるようになった亀梨。第30回吉川英治文学新人賞などに輝く柳広司の同名小説が原作の『ジョーカー・ゲーム』(15)では、本格的なスパイ・アクションに挑戦。第二次世界大戦前夜のアジア某国の国際都市を舞台に、陸軍内の諜報組織「D機関」の諜報員になった青年が、“嘉藤(かとう)”という偽名で米国大使が持つ秘密文書を奪取する初めての任務を遂行する姿を描いている。
『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』(17)、『AI崩壊』(20)などの入江悠監督が国内3か所とインドネシア、バタム島の巨大なオープンセット、シンガポール市内などで行った大規模な撮影も話題になったが、白いスーツとハットの亀梨が市街地を駆け抜ける姿がとにかくシャープでカッコいい。何度も何度も早変わりをしながらの逃走劇、深田恭子が演じた謎の女リンとのキスシーンと肉弾戦、銃撃戦なども華麗をこなす天才スパイを完全に自分のものにしていた。
宇宙人、怪奇現象と対峙する芸人役もモノにする
やったことのない役、意表をつくジャンルに挑戦したいと思うのは俳優の性だと思うが、亀梨もそこは同じで、変わった役にも果敢にチャレンジしている。三島由紀夫の異色のSF小説を『桐島、部活やめるってよ』(12)、『騙し絵の牙』(21)などの吉田大八監督が映画化した『美しい星』(17)で彼が演じたのは、なんと水星人!(ちなみに、父親役のリリー・フランキーが火星人、妹役の橋本愛は金星人を演じている)
さらに、芸人、松原タニシの実体験をJホラーの鬼才、中田秀夫監督が映画化した2020年のホラー映画『事故物件 恐い間取り』では、実際に9軒の事故物件に住んだタニシがモデルの芸人ヤマメになりきり、怪奇現象に脅える彼を引きつった表情やのけ反る芝居で怪演した。
宇宙人やこの世のものではないもの。それらさえも亀梨和也というスターの神秘性をより深めるシチュエーションに過ぎなかったわけだが、彼の最大の魅力はなんと言ってもクールな美しさ。無駄のないシャープな動きがカッコよく、冷たさと温かさが共存する眼差しには老若男女問わず惹き付けられてしまう魅力がある。
その証拠に、先述の『ジョーカー・ゲーム』で演じた“嘉藤”や、2016年のドラマ「怪盗 山猫」のミステリアスなタイトルロール、2018年のドラマ「FINAL CUT」の哀愁漂う美しい復讐者は特にハマっていたし、亀梨が一際イキイキとしていて輝いて見えた。
出会うべくして出会った亀梨和也と二宮彰
ここまでの検証からも、彼が『怪物の木こり』で演じた二宮彰に行き着くのは当然の流れだったような気がしてならない。本作を観たときに、これは亀梨和也のために予め用意された役だったのではないか?と思ってしまったほどだ。なにしろ、二宮彰は優秀な弁護士の仮面を被った、冷酷非情なサイコパスで殺人さえも厭わない。そんな彼と被害者の脳を奪い去る猟奇的連続殺人犯が真っ向から対決するのだ。そこでは亀梨和也のすべてが高濃度で炸裂!切れ味抜群のピカレスク・ロマンに目が釘づけになる。
また、auスマートパスプレミアム会員なら、『怪物の木こり』の上映期間中、土日平日いつでも、何度でも1100円(高校生以下は900円)で本作を鑑賞できる。同伴者1名まで特典が利用できて、対象劇場は全国のTOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマ/シネプレックス、コロナシネマワールドなど。上映日の2日前0時から(TOHOシネマズのシネマイレージ会員は3日前21時から)購入できる。オトクに映画館で楽しめる機会に、ぜひスクリーンで勇姿を堪能してほしい。
文/イソガイマサト