スタジオジブリで名編を手掛けてきたスタッフによる、クオリティの高さが魅力の『屋根裏のラジャー』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、誰にも見えない友だち“イマジナリ“の冒険を描くスタジオポノック最新作、“願いの力“を描くディズニー100周年記念作品、悩めるヒロインが自分なりの愛を探すラブストーリーの、頑張る主人公に力がもらえる3本。
子どもの成長物語としても楽しめる、おススメのファミリー・ピクチャー…『屋根裏のラジャー』(公開中)
スタジオポノックの長編第2作。父親の死をきっかけに少女アマンダ(声:鈴木梨央)が想像力で生みだした、彼女にしか見えない“イマジナリ”の友だちラジャー(声:寺田心)。彼の前に“イマジナリ”を食べて生き続けるミスター・バンティング(声:イッセー尾形)が現れ、ラジャーは大切な人を懸けた冒険の旅に出ることになる。アマンダが想像した世界の中ではいろんなことができるラジャーだが、アマンダがいなければ彼は無力。その無力な主人公が、周りのキャラクターに助けられながら、強い想いだけで突き進んでいく姿が胸を打つ。
百瀬義行監督、西村義明プロデューサーという、スタジオジブリで数々の名編を手掛けてきたスタッフによる、アニメーションとしてのクオリティの高さが魅力。“イマジナリ”とは、『耳をすませば』(95)に出てくるバロンのような存在で、バロンはヒロインの助言者だったが、ラジャーはもっと近しい遊び友だち。子どもの成長物語としても楽しめる、おススメのファミリー・ピクチャーである。(ライター・金澤誠)
名作のキャラクターたちの姿が重なる…『ウィッシュ』(公開中)
『アナと雪の女王』(14)のスタッフ陣によるドラマティック・ミュージカル。国民の願いが叶う理想の王国。だが、その実態は王様によって、人々の心は支配されていた。星に願いをかける主人公はディズニー映画の基本だが、今回のヒロイン、アーシャ(声:生田絵梨花)が願うと、スターが現れる。イタズラ好きだが、愛らしくてどうにも憎めない、スティッチを思わせる星の妖精。彼の魔法で動物たちが話せるようになり、仲間を従えたアーシャは最終的に最強のヴィラン、王様に立ち向かう。
ディズニー創立100周年記念作品に相応しく、話せる動物や心強い仲間、圧倒的に強い王など、名作のキャラクターたちの姿が重なる。それでいて、魔法に頼ることなく、自らの力で道を開かんとするヒロインは100年目のディズニー的。さらに国民のささやかな願いすら危険視して、根こそぎ絶やそうとする強い支配者の姿にはドキッとせずにはいられない。みんなの強い思いが国を変える。伝統を大切にした普遍的な作品に現代的メッセージを盛り込み、それでいて散漫な感じを与えず、どこを切ってもディズニー。職人たちの丁寧な仕事に唸らされる。(映画ライター・高山亜紀)
改めて自分の考えに気付かされる良作…『きっと、それは愛じゃない』(公開中)
どんなにSNSやマッチングアプリで“出逢い方”が進化しようとも、やっぱり恋愛や結婚は人生における永遠の悩みの種かつ課題だと実感させられる、ちょっと美味しい恋愛映画。この“ちょっと”というのが絶妙で、なるほどワーキングタイトル(『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(14)、『ラブ・アクチュアリー』(04)などの製作スタジオ)らしく、さりげなく琴線に触れてくる。ヒロインは三代江戸っ子ならぬチャキチャキのロンドンっ子。幼馴染の青年はパキスタン移民二世で医師のエリート。
結末は予想通りといえばそれまでだが、真の愛に気付くまでの展開を、パキスタンの伝統や価値観、結婚観や家族愛ゆえの呪縛などを次々投下し、良し悪しあわせ持つ両国や世代間双方の価値観や感覚を揉みこんで上手く運んでいく。観る者は誰もが少なからず自分を投映し、改めて自分の考えに気付かされる良作。主役リリー・ジェームズ&シャザド・ラティフが等身大の魅力を放って好感度大。監督はパキスタン・ラホール出身、『エリザベス』(99)などのシェカール・カプール。皮肉とユーモアの塩梅もいい感じ!(映画ライター・折田千鶴子)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼