『パディントン』&『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の関連性とは?ポール・キング監督が影響を受けた偉大な英国作家たちからのレガシー

コラム

『パディントン』&『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の関連性とは?ポール・キング監督が影響を受けた偉大な英国作家たちからのレガシー

あのティモシー・シャラメが、風変わりな凄腕チョコ職人のウィリー・ウォンカを演じる!そう、「チャリチョコ」の略称でもおなじみ2005年の大ヒット作『チャーリーとチョコレート工場』で、ジョニー・デップが演じたチョコレート工場長の若き日の役柄。チョコレート工場を作るまでの青年ウィリー・ウォンカの姿を描いた話題の最新作が『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(公開中)だ。

【写真を見る】美しい歌声とダンスも披露するティモシー・シャラメの爽やかな存在感!
【写真を見る】美しい歌声とダンスも披露するティモシー・シャラメの爽やかな存在感![c] 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

原作者、ロアルド・ダールの世界観に寄せた『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

ところが奇才ティム・バートン監督の手により、かなりクセの強いブラックな味つけが施された「チャリチョコ」に比べると、今回はだいぶテイストが違う。どうやら原作者である英国の作家、ロアルド・ダール(1916年生~90年没)の精神に改めて立ち戻ったようなのだ。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の制作チームは、「チャリチョコ」の原作であった児童小説「チョコレート工場の秘密」(1964年刊)の世界や作風を大切に守りながら、オリジナルストーリーを創作。まるで本当にダールが書いていたかのようなすばらしい傑作に仕上がっている。

ウォンカが作るチョコレートには様々な魔法が込められている
ウォンカが作るチョコレートには様々な魔法が込められている[c] 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

共同脚本も務めた監督はポール・キング。1978年生まれ。出身は米国シカゴだが、やがて英国に渡り、ケンブリッジ大学を卒業したインテリ。おもにコメディの分野でテレビ業界のディレクターとして活躍し、映画監督業も手掛けるようになった。

ポール・キング監督の名を世界に知らしめた「パディントン」シリーズ

彼の出世作は2014年の『パディントン』である。英国の作家、マイケル・ボンドの児童小説のベストセラー「くまのパディントン」シリーズを原作にしたもので、2017年の続編『パディントン2』共々、興行的に大成功を収めたばかりか批評家陣からも絶賛を受けた。この当時から『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』までずっと組んでいるのが、「ハリー・ポッター」シリーズ(2001~11年)のプロデューサーとして知られるデイビッド・ヘイマンである。

南米ペルーの密林から大都会ロンドンにやって来たパディントンの奮闘を描く『パディントン』
南米ペルーの密林から大都会ロンドンにやって来たパディントンの奮闘を描く『パディントン』[c]Everett Collection/AFLO


この「パディントン」はファミリームービーの体裁を取りながら、実は「社会派」の含みを持たせている。それがキング監督の卓越だった。南米ペルーの密林から、単身で大都会ロンドンにやって来た若きクマのパディントンは、すなわち移民である。見た目も明らかに異質で、人間界の慣習も知らない彼は、新天地では圧倒的なマイノリティとして扱われ、悪戦苦闘の連続。それでも彼の優しい性格と、親切な人々との出会いを通して、だんだん街のコミュニティに受け入れられていく。

人々の役に立とうとして様々な仕事に挑戦するパディントン(『パディントン2』)
人々の役に立とうとして様々な仕事に挑戦するパディントン(『パディントン2』)[c]Everett Collection/AFLO
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