スーパーマンやバットマンに匹敵する長い歴史を持つDCヒーロー、ブルービートルって何者?
コミックスの人間関係を知ると、より楽しめる映画版の世界
敵となるのは、原作コミックスの2代目ブルービートルであるテッド・コードが経営していたコード社を乗っ取った彼の妹であるビクトリア・コード(スーザン・サランドン)。彼女は、テッドが研究していたブルービートルの力を軍事利用すべく暗躍する。しかし、それを好ましく思わないテッドの娘であるジェニー・コード(ブルーナ・マルケジーニ)は、スカラベを盗み出し、偶然に出会ったハイメにコード社から持ち出すよう手渡す。スカラベはハイメを宿主として選び、彼の体に融合。その結果、ハイメはコード社に追われる身となるが、大切な家族を守るためにスカラベの能力を使い、ブルービートルとして戦うことを決意する。
主人公のハイメが住むのは、メキシコに接するアメリカのテキサス州エル・パソ。メキシコ移民の子孫であり、都市部は発展するものの移民の人々は貧しい暮らしを強いられ、ハイメはそこから抜け出すために大学を卒業したものの、破産直前に追いやられた家族を救うことができず思い悩む。そんななか、ハイメは職を得ようとコード社に訪れてヒーロー的な能力を得ることになるのだが、そうした社会的な背景とリンクした青年像の描き方は、メキシコ移民版「スパイダーマン」とも言える仕上がりとなっている。
ブルービートルのスーツは「アイアンマン」を想起
また、ハイメの思念によって形状を変えるブルービートルのスーツの表現は「アイアンマン」を想起させる。その結果、予告編だけ見てしまうとライバルであるマーベル・シネマティック・ユニバースの良いところ取りという作品と誤解してしまいそうだが、前述した長い歴史を持つ原作へのリスペクトと現在のアメリカが抱える移民問題とのリンクした社会情勢が描かれ、現代だからこそ描くべき独自のエンタテインメント作品として楽しめる1作となっている。
そして、原作コミックスの情報を踏まえれば、劇中に散見できるより細かい描き込みが楽しめるはずなので、アメコミヒーロー映画好きなら偏見を持たずにじっくりと楽しんでみてほしい。
文/石井誠
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発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント