ジェームズ・ワン監督が語る「アクアマン」の進化!「いい奴も悪い奴も、すべてのキャラクターを突き動かしているのは家族への愛」
「デビュー当時までさかのぼっても、僕はずっと家族を描いてきました」
兄弟や家族の絆は、ワン作品に共通するテーマでもある。「ワイスピ」シリーズは固い絆で結ばれた仲間=ファミリーの活躍が、「死霊館」シリーズでも心霊研究者の夫婦が力を合わせ悪魔と戦う姿が描かれた。「デビュー当時までさかのぼっても、僕はずっと家族を描いてきました。文化や背景、形式に関係なく、みんななにらかしら“家族”の一員です。家族の絆の物語は誰もが共感できるものだと思います」。本作ではアーサーとオームだけでなく、ヴィランであるブラックマンタにも家族のドラマがある。彼は目の前で父親を見捨てたアクアマンへの復讐に燃えている。「ブラックマンタの原動力は世界を支配することではなく、アーサーへの憎しみです。彼は愛する父の死の責任はアーサーにあると思っています。自分の苦しみを味わわせるため、アーサーとその家族を滅ぼそうとするんです。いい奴も悪い奴も、すべてのキャラクターを突き動かしているのは家族への愛。本作の物語は常に家族の関係性というテーマに立ち戻るのです」。
「観客を共感させ、自分がその状況に置かれたら同じことをするだろうなと思わせるのは、映画の大切な要素」
ワンが絆や家族のつながりを描き続ける理由を聞くと、やはり「共感」というワードが帰ってきた。「僕らが映画やキャラクターのどこに共感するかを突き詰めると、人間性に尽きると思います。『ワイルド・スピード SKY MISSION』で、ビルからビルへとジャンプする車自体に共感はしませんよね?でも車の中で『車は飛もんじゃないって!』と叫んでいるキャラクターには、感情を添わせることができるんです(笑)。観客を共感させ、自分がその状況に置かれたら同じことをするだろうなと思わせるのは、映画の大切な要素だと思います。そんな共感ポイントを見つけることができれば、どんなクレイジーなシチュエーションも成り立たせることができるんです」とワンが考える。それは世界中にソリッドシチュエーションスリラー旋風を巻き起こした長編監督デビュー作『ソウ』(04)から学んだそうだ。「あの映画を観てくれたたくさんの人たちが、もし自分が連続殺人犯の死のゲームに巻き込まれたらどう行動したか?を僕に話してくれたんです。あの経験は僕にとって大きな学びでした。観客をキャラクターの気持ちにさせることがいかに重要か実感したんです」と振り返った。
最後に2本の『アクアマン』を撮り終えた感想を聞いてみた。「僕にとって、アクアマンというキャラクターを原作コミックスとはまた違った形で新たに描くことができたことはすごく大きいです。何年後かに振り返ってみると、たぶん僕の手掛けた2本の映画はやがて作られるであろう『アクアマン』シリーズのテンプレートになっていると思います。僕にとってそれはすごく光栄なことですね」。
取材・文/神武団四郎