俳優、山崎賢人の最高峰がここに!『ゴールデンカムイ』杉元佐一役で見せた進化に迫る
心と体に多くの傷を抱えながらも、心根の優しさを見せる杉元佐一を全身で体現!
そして、次なる高みを目指す山崎が、満を持して挑んだのが『ゴールデンカムイ』だった。明治末期の北海道を舞台にアイヌの莫大な埋蔵金争奪戦をスリリングに描く本作で彼が扮したのは、日露戦争の激戦地、二百三高地での鬼神のような戦いぶりから“不死身”の異名をとる元軍人、杉元佐一。金塊の行方を探す彼は、ヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシリパ(山田杏奈)に助けられ、彼女と行動を共にすることになる。
本作の完成報告会見では、松橋真三プロデューサーが「(原作者の)野田先生が『山崎さんは杉元と本質的に似ているところがあると思う』と仰っていました」とコメント。「私が思うに、カッコよくて強いだけではなく、心根の優しさや器の大きさ、多くを語らずに行動で示すところを見て直感的にそう感じられたんだと思います」と補足したが、劇中の山崎はその言葉通り、杉元佐一そのものだ。
山崎も「戦争に行く前の、彼の心優しい部分から丁寧に作っていくことができたのはよかったですね」と語っていたが、強さを印象づけるために体重を10kg増量したこともあり、これまで以上にたくましさを感じられる。大衆浴場のシーンでは、そのひと回りデカくなった美しい肉体に目が釘づけになるに違いない。
それこそ、二百三高地での激戦のシーンでは敵兵を次々に倒していく杉元をワンカットで撮った壮絶なアクションに圧倒されるが、山崎は「あの長回しは、“不死身の杉元”を表すうえでとても意味のあるものだったと思います」と述懐。「“やられる前にやる”、杉元の鬼神のような部分も出せたらいいなと思っていましたからね」。
山崎はほかにも、雪山でヒグマと攻防戦を繰り広げたり、ハンパなく寒い北海道で馬に引きずられたソリの上で雪を浴びながら闘ったりする決死のアクションにも果敢にチャレンジ。「北海道まで行って撮影した意味が間違いなくありました」と胸を張るが、大自然の本物の寒さと脅威が彼のアクションをよりスリリングなものにし、「不死身の杉元だー!」という決めゼリフも血の通ったリアルなものにしていた。
人間性を取り戻す杉元を表現した山崎の新境地
『ゴールデンカムイ』ではそれだけでなく、新境地を拓いた山崎を目撃することになる。一人の青年の成長を描いたこれまでの出演作と違い、「戦争で傷ついた杉元が、アシリパさんと出会い、忘れてしまっていた人間として大切なものを取り戻していくところを表現したかった」と山崎が語る杉元佐一のキャラクターには深い人物造形が見て取れる。しかも、アシリパや天才脱獄犯の白石由竹(矢本悠馬)と一緒に食事をするシーンでは、ポーカーフェイスを装う杉元にどこかとぼけた山崎の天性のキャラが見え隠れして、緊張感が連続する映画に微笑ましい笑いと温もりをもたらしていた。
これぞ、現時点での山崎賢人の究極の姿!もちろん彼の挑戦と内なる能力がさらに覚醒する日々はこれからもまだまだ続くし、安倍晴明に扮した『陰陽師0』(4月19日公開)、『キングダム 大将軍の帰還』(7月12日公開)がすでに待機中。『ゴールデンカムイ』の続編も今回の大ヒットを受けて製作されるのは間違いないだろう。強く、美しく、しなやかに進化する山崎が、この先も日本の映画シーンのトップを走り続ける。
文/イソガイマサト
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」、アシリパの「リ」は小文字が正式表記