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貴重な資料も大放出!佐藤嗣麻子監督が語る、『陰陽師0』と現代社会の関係性「SNSは“呪”の塊」

インタビュー

貴重な資料も大放出!佐藤嗣麻子監督が語る、『陰陽師0』と現代社会の関係性「SNSは“呪”の塊」

「羽生結弦さんのスケートからインスピレーションを得たアクションシーンがあります」

若き日の晴明と博雅を、山崎賢人と染谷将太が演じた本作。このキャスティングについて「山崎さんは、オーラが不思議な人なんですよ」と、その魅力を明かす。「獏さんの『陰陽師』だと美形キャラの設定なので、そういうところでも合っているなと思っていましたが、あの人間離れしているような雰囲気が晴明に向いていると思いました。『陰陽師』のマンガ版を手掛けている岡野玲子さんが試写を観てくれたのですが、『私は若いころの晴明って山崎さんのようなお顔をしていると思ってました』と、お墨付きをもらうこともできました(笑)。あと山崎さんは淡々と撮影に挑むというか、何回もテイクを重ねても、まったく不平不満を言わない。珍しいぐらいストイックな人です」。

「帝都物語」で加藤保憲を演じた嶋田久作も暦博士として出演している
「帝都物語」で加藤保憲を演じた嶋田久作も暦博士として出演している[c]2024映画「陰陽師0」製作委員会

「キングダム」シリーズや『ゴールデンカムイ』(公開中)では、高い身体能力を活かしたパワフルなアクションを披露している山崎。本作では打って変わって、晴明らしい、しなやかなアクションシーンが見どころとなっている。「以前監督した『アンフェア』や『K-20』では、ワイヤーアクション使っていてもちゃんと重力があるアクションにしていたのですが、本作では、山崎さんに少し浮いているような感じでアクションをしてもらったシーンがあります。アクション監督の園村健介さんは、羽生結弦さんのスケートからインスピレーションを得て作りましたと仰っていました。具体のシーンは言えないのですが楽しみにしていてほしいです」と説明し、そのアクションを見事こなした山崎を称えていた。

『陰陽師0』画コンテより。晴明と博雅の凸凹コンビにも注目!
『陰陽師0』画コンテより。晴明と博雅の凸凹コンビにも注目![c]2024映画「陰陽師0」製作委員会

一方の博雅役については、晴明役が山崎に決まった後にキャスティングしたと話す。「もともと獏さんの『陰陽師』は平安時代版ホームズとワトソンという発想から生まれているので、本作の晴明と博雅も凸凹コンビにしたいと考えて、染谷さんが適役だと思いキャスティングしました。染谷さんもすごく漂々と淡々としている人だと思います。演技では“難しい注文”が好きだと言っていたので、『私は』というセリフをただ繰り返すところを『一本調子にならないように』と伝えたら、さっと演じ分けて応えてくれましたね」。

「 “エレメント”の状態にある龍をを出したかった」

佐藤監督作品といえば、『K-20 怪人二十面相・伝』(08)でのスチームパンクな世界観や、山崎貴監督がSFXスーパーバイザーを担当した『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』(95)での魔術対決シーンなど、ビジュアル面も大きな魅力となっている。全国各地で大規模ロケを敢行した本作は、ビデオコンテを制作して入念に準備されているが、その美へのこだわりは「無意識から湧いてくるんですよ」と微笑みながら説明する。「考えなきゃならないネタを頭に入れて、あとは放置しておくんです。すると急にアイデアが出てくる感じです。考えて組み立てをするんじゃなくて、ボカッと出てくるイメージですかね。実は映像だけじゃなくて、キャラクターとか脚本も同じなんですよ。だから自分で考えているんじゃなくて、頭の中でキャラクターが会話し始めて、映像が浮かんできて、私はただそれを写しているだけなんです」。

『陰陽師0』画コンテより。こだわり抜かれたVFXでの龍は必見!
『陰陽師0』画コンテより。こだわり抜かれたVFXでの龍は必見![c]2024映画「陰陽師0」製作委員会

湧き出てくるアイデアをもとに映像化をしていくと話す佐藤監督。本作では特に龍が登場するシーンに注目してほしいとのこと。「そもそも龍というのは、 “エレメント”の状態にあると考えているんですけど、外国映画を観るとドラゴンはいつもモリっとした物体として出てくるんですよね。本作では絶対に“エレメント”としての龍を出したくて、私が知らないだけで、ほかの映画でもやっているかもしれませんが、私としては今回初めてやったと勝手に思ってます。“エレメント”としての金だったり、火だったり、水だったりというのが、龍のエネルギーとして現れます」と語り、東洋ならではの龍の魅力を熱弁した。

「舞台となる平安時代は、資料がなかったり建物があまり残っていない」

また平安時代を舞台としていることもあり、衣装や建物などの美術についてもこだわりを持って制作したという。「本作は学術的な歴史ものではないので、もちろん時代背景を無視した部分もあるんですが、自分なりに調べ尽くしたうえで制作しました。ここは史実通りでここは想像でやっていますということを、わかったうえでやりたかったんです。舞台となる平安時代は、資料がなかったり建物があまり残っていなかったりするので、一から世界を作りあげるような感じで大変でした。陰陽寮なんて誰も見たことないですしね。現代ものであれば、いいロケーションがあれば、『そのまま撮ればいいんじゃない』みたいな感じで終わることもあるんですが、平安時代が舞台ではそうもいかないですからね」。

『陰陽師0』美術資料より「徴子の部屋」。本編と見比べるとその再現度に驚くはず!
『陰陽師0』美術資料より「徴子の部屋」。本編と見比べるとその再現度に驚くはず![c]2024映画「陰陽師0」製作委員会


史実と想像を重ね合わせて作り上げた映像を観ると、日本を舞台とした作品であるのにどこか西洋の雰囲気が感じられる。この点について問うと、「東大寺正倉院の宝物を見ると、意外と洋風なんですよ」と時代背景を説明する。「平安中期のビジュアル資料としては、源氏物語絵巻という平安時代末期の作品があるんですけど、これは源氏物語が書かれてから約150年後に作られているんですよね。いまで考えると、150年前の日本はもう服装も全然違うじゃないですか。写真とかもない時代ですし、絵巻を描いた人たちは、おそらく自分の時代の服を描いたのでは?と、思うんです。布きれが残っていたり、ちょっと記録が残っていたりしていますが、そのどれが正しいとは言えない時代だと思ったのです。だから、外国のものがどのくらい入ってきていたかなどは、よくわからないんですよね。もちろん映画ですからなんでもありなんで、そういう意味ではペルシャや唐を経由して外国のいろんなものが入っていたであろうと想像して、外国語の文章も存在している世界を構築しました」。

『陰陽師0』美術資料より「美しい場所」
『陰陽師0』美術資料より「美しい場所」[c]2024映画「陰陽師0」製作委員会

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