『ソウルメイト』ミン・ヨングン監督、「映画館の大きなスクリーンで、微妙な目の動きや細やかな息遣いを感じてほしい」
「秘めやかなときめきを感じさせる、廃墟でピアスを付け合うシーンが気に入っています」
ミン・ヨングン監督に好きなシーンを尋ねると、「たくさんありますが、ネタバレになってしまうので序盤で」と前置きして、学生時代にミソがハウンを廃業となったホテルに連れて行き、ハウンのために作ったピアスをプレゼントして付けてあげるシーンを挙げた。
「明け方に撮ったんですが、廃屋となった部屋の窓から済州島の海が見える中でお互いにピアスを付け合う姿が、秘めやかでときめきを抱かせるようなシーンになったと思います。撮影中も編集中も、完成した映画を観た時も好きだなと思いました」
好きなセリフは、「先程お話しした画家の方の言葉の引用ですが、“愛がなければ描くことすらできなかった絵を描きたかった”というセリフです」とのこと。このセリフがどこでどのように語られるのか、ぜひ注目してほしい。
「“劇場で映画を観る”という貴重な価値は、いまも生きていると思います」
今作は、劇場公開を念頭に置いて作られた。最近は配信用に作られる映画も多く、劇場公開作でも配信を待つ動きも多いなか、「映画館で観る」良さについて尋ねると、「スペクタクルなものを大迫力で楽しめる利点もありますが、同時に、表情を深く見ることができるのが良いところ」と答えが返ってきた。
続けて「大きなスクリーンと良質なサウンドで、映画監督が表現したい繊細な部分を余すところなく観客にも感じてもらえますし、たくさんの人たちと同じ空間で集中しながら観るのと1人で観るのとでは、間違いなく感情や反応に違いがあると思います。映画の危機が叫ばれている昨今ですが、“劇場で映画を観る”という大切で貴重な体験と価値は、いまも生きていると私は思っています」と語り、最後に「『ソウルメイト』は、微妙な目の動きや細やかな息遣いが大きな比重を占めています。それを劇場でぜひ感じていただきたいです」と締めくくった。
取材・文/鳥居美保
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