多くの人に観てほしい愛すべき人生讃歌『パスト ライブス/再会』など週末観るならこの3本!

コラム

多くの人に観てほしい愛すべき人生讃歌『パスト ライブス/再会』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、24年の時を経て再会した男女を描くラブストーリー、伝説的なプロレスラーを父に持つ息子たちの姿を実話に基づき描くヒューマンドラマ、とある残酷なルールが存在する島を舞台にしたリゾート・スリラーの、ラストまで目が離せない3本。

心くすぐるセンスが光る…『パスト ライブス/再会』(公開中)

【写真を見る】24年ぶりに再会した男女の7日間を映しだす(『パスト ライブス/再会』)
【写真を見る】24年ぶりに再会した男女の7日間を映しだす(『パスト ライブス/再会』)2022 [c] Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

受賞には至らなかったものの、第96回アカデミー賞に作品賞、脚本賞でノミネートされたほか、今年の賞レースを大いに賑わせた話題作。多くの人に“魔法を掛けられた”と評されるのは、きっと誰もに、どこかで急に込み上げる瞬間が訪れるから。それを妙に話したくなるのだが、各々の経験や年齢によって、その瞬間が少しずつズレるのが、また乙だ。12歳で移住のため別れ、24歳でオンライン再会、36歳でリアル再会をはたす、幼馴染の男女の恋と友情と生活が12年ごとに活写される。

韓国とカナダという思いつきでは会えない距離、様々な変化が当たり前の12年という月日、その間に描かれない時間、根っこの部分は変わらない知れた気心の“かけがえのなさ”。それら絶妙な設定がすべてにジワジワ効いてくる。若干、ヒロインの生き方や選択が流されているようにも思えるが、監督自身の体験を反映しているだけに、異国で生きるということ、その厳しさも含めた事情や心情が興味深く、リアルな説得力も感じさせる。人生って甘くない、大人になるってこんなにもせつない。でも、悪くはない。初監督、脚本にして抑えたトーンや自然な物語運び、さりげなく美しい映像も、心くすぐるセンスが光る。まずは騙されたと思って、多くの人に観てほしい愛すべき人生讃歌だ。(映画ライター・折田千鶴子)

プロレスへの情熱も上回るほど熱すぎる兄弟愛…『アイアンクロー』(公開中)

プロレスラー、フリッツ・フォン・エリックの息子たちを実話をベースに描く『アイアンクロー』
プロレスラー、フリッツ・フォン・エリックの息子たちを実話をベースに描く『アイアンクロー』[c] 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

プロレス好きなら「あの一家の運命が映画化されるのか!」と期待が上がり、一方で詳しくない人は、観てみたら信じがたい運命に打ちのめされる…。両サイドで、それぞれのインパクトを味わえる力作だ。なにより圧倒されるのは、過去のプロレス映画と比べても格段にリアルな試合のシーン。監督のショーン・ダーキンが根っからのプロレスファンで、カメラアングルやカット割りなど、観せるべきツボを心得た映像がぎっしり。主人公たちの対戦相手として現役レスラーも出演し、技の数々に“本物感“が漂う。そしてザック・エフロンら俳優陣もトップロープからのジャンプや豪快なキックに全身全霊で挑み、涙ぐましいほど。本作のために肉体改造した彼ら(とくにエフロン!)のムキムキ筋肉美は驚嘆レベルだ。

主人公一家に相次ぐ悲劇も目を疑うレベルなのだが、肝心の瞬間は観る者の想像力に委ねるなど、一線を越さない演出にも感心。プロレスへの情熱も上回るほど熱すぎる兄弟愛には、誰もがストレートに胸を打たれることだろう。(映画ライター・斉藤博昭)

人間の悪質さを、エロ、グロ満載にあぶりだしていく…『インフィニティ・プール』(公開中)

ブランドン・クローネンバーグが放つスリラー『インフィニティ・プール』
ブランドン・クローネンバーグが放つスリラー『インフィニティ・プール』[c] 2022 Infinity (FFP) Movie Canada Inc., Infinity Squared KFT, Cetiri Film d.o.o. All Rights Reserved.

鬼才、デヴィッド・クローネンバーグを父に持ち、自身も『アンチヴァイラル』(12)、『ポゼッサー』(20)など独創的な作品を生みだしてきたブランドン・クローネンバーグの長編3作目『インフィニティ・プール』。セレブたちが集う美しい高級リゾート地の孤島に、スランプ中の作家ジェームズが新たなインスピレーションを求めてやって来る。ある日、ジェームズの前に彼のファンを名乗る女性ガビが現れ、誘われるままリゾートの敷地外に出たのが悪夢の始まりに…。この地では観光客がどんな犯罪を起こしても、多額の資金を支払うことで自身のクローンを作成し、身代わりにすることができるという特例措置があったのだ。

一応、我々現代人は高度な文明のなかで生き、ルールや節度、道徳観を重んじている。しかしそこから解き放たれた時、人々は傍若無人に振る舞い、非道になってしまう。“インフィニティ・プール”と言えばシンガポールのマリーナベイ・サンズが有名で、外縁が存在しないように見せかけて設計したプールのこと。どんなに上辺を取り繕うとも、内に秘めた下劣さとは境界など存在しないのでは?と思わされる。このような人間の悪質さを、エロ、グロ満載にあぶりだしていくわけだが、そこはブランドン監督らしい洗練された映像や音楽によってぐんぐんと引き込まれていく。文字通り体を張ってジェームズを演じたアレクサンダー・スカルスガルド、ジェームズを翻弄するガビ役のミア・ゴスの怪演もすさまじい。(ライター・平尾嘉浩)


映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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