マーベル不在の北米サマーシーズンは、ライアン・ゴズリング主演作で幕開け!濱口竜介監督の最新作も初登場

コラム

マーベル不在の北米サマーシーズンは、ライアン・ゴズリング主演作で幕開け!濱口竜介監督の最新作も初登場

北米のサマーシーズン興行の幕開けは、コロナ禍であった2020年と2021年を除けば2007年以降のすべての年でマーベル作品(MCUやソニー系、FOX系も含む)と共に迎えるのが定番であった。ところが今年はシーズン終盤に差し掛かる頃に『デッドプール&ウルヴァリン』(7月26日日本公開)が控えているだけで、夏のはじまりにはマーベル作品が不在。代わりにこの大役を任されたのは、ユニバーサルのアクションコメディ『フォールガイ』(8月16日日本公開)だ。

海外を含めた全世界興収は7000万ドルを突破!閑散期の北米興収を盛り上げる
海外を含めた全世界興収は7000万ドルを突破!閑散期の北米興収を盛り上げる[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS. ALL Rights Reserved. 

『デッドプール2』(18)や『ブレット・トレイン』(22)のデヴィッド・リーチ監督がメガホンをとり、『バービー』(23)で第96回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたライアン・ゴズリングと『オッペンハイマー』(日本公開中)で同助演女優賞にノミネートされたエミリー・ブラントが共演を果たした本作。一線を退いたスタントマンが、元恋人との復縁とキャリア復活をかけて失踪した因縁の俳優を追い、思わぬ事件ぬ巻き込まれていく様を描く作品だ。

4002館という大規模で公開され、初日から3日間の興収は2774万ドル。今年に入ってから4000館以上で公開された作品はほかに4本あるが、そのうち3本がオープニング興収で4000万ドルを超えていること、また事前の予測では3000万ドルは超えてくると期待されていたことを踏まえると少々物足りない。とはいえここ最近の映画館の換算具合を加味すればまだ踏みとどまったほうか。例年に比べるとライバルが少ないサマーシーズンだけに、1億4000万ドルという高額な製作費をどこまで回収できるかがポイントとなるだろう。

25周年を迎えた『ファントム・メナス』がリバイバルとしては異例の2位にランクイン
25周年を迎えた『ファントム・メナス』がリバイバルとしては異例の2位にランクイン[c]Everett Collection/AFLO

また2位には公開25周年を迎えた『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』(99)の再上映がランクイン。2700館で3日間興収873万ドルという成績は、リバイバル上映であることを考えればかなり上々。そもそもリバイバル作品がトップ3に入ること自体があまりなく、昨年の『タイタニック』(97)以来。かなりの人気作だけが成しえることである反面、これもまた閑散期の効果と考えることもできる。

今回はちょうど公開週末に「May the 4th(=5月4日のスター・ウォーズの日)」が重なり、同日のデイリー興収は土曜日であることを抜きにしてもほかの日より抜けて高い。そもそも25年前の公開時には北米累計興収4億3000万ドルのメガヒットを記録した同作。その後の3D再上映で『スター・ウォーズ』(77)の興収を抜き去っているが、今回の再上映ではさらに1000万ドル近くの上乗せに成功。現在の累計興収は4億8400万ドルで、『アナと雪の女王2』(19)を抜いて歴代22位まで浮上している。

【写真を見る】濱口竜介監督『悪は存在しない』が『ドライブ・マイ・カー』超えの好スタート!
【写真を見る】濱口竜介監督『悪は存在しない』が『ドライブ・マイ・カー』超えの好スタート![c]2023 NEOPA / Fictive

そして限定公開作では、濱口竜介監督の『悪は存在しない』(日本公開中)が3館で封切られ、1館あたりのアベレージでは1万4250ドルを記録している。同作の配給は前作『ドライブ・マイ・カー』(21)と同じジャヌス・フィルムズ。その前作はオスカーレースに乗ったことで徐々に上映規模と興収を増やしていったが、オープニング興収で見れば今作の方が大きい。また、昨年秋に北米で限定公開された是枝裕和監督の『怪物』(23)のオープニング時のアベレージ興収は1万2801ドルだったので、濱口竜介作品がかなりの注目を集めていることが窺える。


批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は92%。『ドライブ・マイ・カー』の同97%には届かなかったものの、なかなかの高評価を獲得していることは一目瞭然。今回もオスカーレースに名乗りを上げるかどうかはなんとも言えないところではあるが、秋以降に行われる全米各地の批評家協会賞では善戦する可能性は高そうだ。


文/久保田 和馬

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