「ボブ・マーリーに多大なる影響を受けた」こがけんが『ボブ・マーリー:ONE LOVE』の深さを解説!「めちゃくちゃ洗練されていてクールでカッコいい映画!」
「『バービー』ケン役からの振り幅がすごい」
「ハリウッド映画あるある」などのネタでも人気を集めるこがけんは、本作でボブ・マーリー役を務めたキングズリー・ベン=アディルが、ボブ・マーリー特有の仕草や歌い方、声の出し方に至るまで、本物と見紛うほど完コピしてみせたことにも感嘆の声を上げる。
「それこそ『ヤーマン!』ですよ。しかも、彼はこの映画の直前に『バービー』でケンを演じていたっていうんだから、その振り幅がすごいですよね。ライブシーンには基本的にボブ・マーリー本人の歌声が使われているんですが、ギターで作曲しているような場面ではべン=アディルの声も聴けるんです。もちろんボブ本人の声とは厳密には違いますけど、ちょっとハスキーなウィスパーボイスで歌うところなんて上手すぎて、思わず鳥肌が立ちました。ライブでのステップの踏み方も、カクカクしつつも滑らかにリズムに乗って踊るところがめちゃくちゃリアルで、本物のボブ・マーリーを見ているかのようでしたけど、聞いたところによれば、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックや『エルヴィス』でプレスリーを演じたオースティン・バトラーの身体動作のコーチを務めていた方(※ムーブメント&コレオグラファーのポリー・ベネット)が、今回も協力されているそうで。クオリティが高いのも納得ですよ」
「リタは精神的にもボブを牽引し、彼の創作活動におけるミューズだった」
ボブ・マーリーは、「刃をみずからに向けてはいけない」というラスタファリアニズムの教えに則り、髪をドレッドにし、のちに足の親指にメラノーマ(悪性黒色腫)が見つかった際も、外科手術を頑なに拒否としたほど敬虔な<ラスタファリアン>でありながら、女性関係には相当ルーズで、7人の女性との間に11人の子どもをもうけたと言われている。
「ボブは妻のリタ以外の女性との子どもまで引き取って育てていたリタからしてみれば、とんでもない夫ですよね。監督の前作『ドリームプラン』のなかにも、ウィル・スミス演じるリチャードが夫婦喧嘩の最中に、奥さんからとんでもなく反撃されて、詰め寄られるシーンがありましたけど、この映画に登場するパリの路上でボブとリタが喧嘩するシーンも爽快でしたね。あの喧嘩のシーンがあるのとないのとでは、映画としての深みがまったくといっていいほど違ってくると思います。リタはボブにラスタファリアニズムを布教したラスタファリアンの先輩であり、精神的にもボブを牽引していた上に、彼の創作活動におけるミューズでもあったわけだから、もしもボブの傍らに彼女がいなかったらあの名曲の数々は生まれていなかった。映画を観るとそれがよくわかる。妻であり、母であり、一人のミュージシャンでもあったリタの葛藤もちゃんと描いているところも、本作のすばらしいところだと思いますね」
「上下アディダスのジャージを“イケてる!”と思わせた人は、ボブ・マーリーが初めて」
Instagramにオシャレな私服コーデをたびたびアップするファッショニスタでもあるこがけんにとって、抜け感のあるボブの着こなしやザ・ウェイラーズのメンバーの色合わせも、注目すべきポイントなのだそう。「ファッション好きなら絶対刺さるはず!」と力説する。
「Tシャツや帽子によく使われているラスタカラーの赤・黄色・緑・黒にも、本当はそれぞれちゃんと意味があって。赤は戦士が流した血の色で、黄色がジャマイカの輝く黄金の色。緑は豊かな大地の色で、黒はアフリカンアメリカンの肌の色なのですが、入口としては『なんかオシャレだな』とかでも、全然いいと思うんです。この映画のなかにもボブが仲間たちとみんなでサッカーをするシーンが何度か出てきますけど、それこそ上下アディダスのジャージを、“イケてる!”と思わせるほど着こなせた人は、おそらくボブ・マーリーが初めてだったんじゃないかな。胸に『M』のイニシャルが入ったジャージの裾から少しだけニットをのぞかせて、アディダスのジャージのパンツをソックスインする姿がめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。これまで何度も写真で目にしてきたボブの独特な装いが、今回映画のなかで完璧に再現されているのを見て、ボブ本人ではないとはわかりつつも、『あ、動いてる!』って不思議な感覚になりました(笑)」