黒澤明にゴーゴー夕張…日本スタイルからも影響を受ける「スター・ウォーズ:アコライト」のアクションがすごい!
黒澤映画にも通ずる!日本や香港要素も加わった新たな表現
続く第2話のクライマックスでは、イ・ジョンジェ演じるジェダイ・マスターのソルとメイが対峙するアクションが見せ場となる。第1話のメイとインダーラとの対決では、謎の存在であるメイの奇襲からバトルがスタートするが、第2話ではメイの行動目的や特徴がある程度わかり、一転して追われる側の存在としてソルと対峙することになる。
荒削りな体術を駆使するメイと格の違いを見せつけるように攻撃をかわすソル。ライトセイバーでの戦いと同じようにフォースで攻撃を察知して防御し、隙を見逃さず攻撃するという駆け引きはそのままに、格闘技としてのフォースの使い方がアクションシークエンスで表現される。その戦いぶりは、カンフー映画における実力に差がある武芸者同士の戦いそのものであり、それでいてライトセイバーという武器はなくても戦いにおいてはフォースによる駆け引きが表現可能であることがわかる。そして、先に挙げた日本映画の流れを汲むアクションシーンに留まらず、香港映画的なアクション要素も積極的に取り入れていることで、目新しさとアクション的な爽快感を増幅させることにも成功している。
かつてジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(77)を創作する際に大きな影響を受けた作品として、黒澤明監督作の『隠し砦の三悪人』(58)を挙げている。影響を受けているのは、キャラクター設定や配置、映像演出的な部分ではあるが、黒澤映画における『隠し砦の三悪人』の画期的な要素として、実戦的な剣戟アクションを時代劇に初めて本格的に取り入れた殺陣師の久世竜が参加したことが大きな転換点につながったと言われている。それまでの時代劇のチャンバラシーンは、大きく見得を切り、舞のようにも見える歌舞伎的な立ち回りで見せる手法が採られていた。しかし、久世はよりリアリズムに徹した荒々しい殺陣をつけることを提案。『隠し砦の三悪人』に続いて制作された『用心棒』(61)では、「本式立ち回り」と呼ばれる殺陣を取り入れた結果、時代劇のアクションにリアリティが生まれ、チャンバラの概念を大きく変えることにつながった。「アコライト」におけるマーシャルアーツを取り入れたアクションもまた、ある意味「本式立ち回り」を取り入れて進化した黒澤映画と同じようにも見える。
こうした要素を踏まえ、まだ本格的に描かれていないライトセイバーを用いたアクションでは、マーシャルアーツの要素を取り入れることでどのように進化しているのか?ミステリアスな物語に引き込まれながらも、変化するフォースを用いたアクション表現の新しい見せ方にも期待したい。
文/石井誠