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唯一無二の世界観の秘密は”バランス”。「モノノ怪」生みの親が語る、画作りのコツからアフレコ秘話まで

インタビュー

唯一無二の世界観の秘密は”バランス”。「モノノ怪」生みの親が語る、画作りのコツからアフレコ秘話まで

「フィクションだけど嘘は描かない」

劇場版は“新生”「モノノ怪」となる完全新作だが、アニメシリーズから大切にしていることは変わらない。「まず、タイムレスであること。トレンドは無理に入れずに普遍性を大事にしています。そして、フィクションだけど嘘は描かないこと。真実味をもって描けないと感じたらエピソードごとまるっとナシにします」とこだわりを語る。「なぜ、モノノ怪が生まれたのかという情念の部分の描き方、観る人の心にどう響くかがとても大事。『モノノ怪』にはファンタジーな設定はあるけれど、割と現実的なお話が描かれています。中二病心にビンビンくるすごく人工的な世界も個人的に大好きなのですが、『モノノ怪』では、半分人工的、半分リアルみたいなバランスを大事にしています」とのこと。この絶妙なバランスこそが『モノノ怪』の唯一無二の世界観を生みだしているのだ。

女性たちの情念から生まれた”唐傘”
女性たちの情念から生まれた”唐傘”[c]ツインエンジン



「『モノノ怪』には普通のアニメーションならば自然にあっていい演出や技術の禁止事項が多く、悩みながら作っています」と語る中村監督。「アニメーションでは写真のような画を目指している作品と絵画のような画を目指す作品がありますが、『モノノ怪』の場合は後者を目指しています。わかりやすいところで言うと、スマートフォンでポートレートモードにして背景をぼかしたりする。あのボケは『モノノ怪』では禁止。いまのトレンドはどちらかというと写真っぽい画のアニメーションなので、『モノノ怪』ではそういった技術はとことん使わないようにしています。現場では『慣れないなあ』という声もたくさんあったけれど、メインで入っているディレクターたちの作品に対する理解度がすごくて。僕が指摘する前に直すというレベルに達しているので、安心して任せられました」。

絵巻物のような唯一無二の世界観
絵巻物のような唯一無二の世界観[c]ツインエンジン

前作から17年。制作の現場や視聴者(観客)の目も変化している。タイムレスであること、トレンドに左右されないことが「モノノ怪」を制作するうえでのテーマだが、技術面で、いまだから表現できる「モノノ怪」があったそう。「ツールが発展しているし、当然、それを使えるスタッフの数も増えています。作画は圧倒的に昔より細かくなっているし、すごく滑らかです。人物ひとりひとりの所作の表現はとんでもなく豊かになりました。僕がどんな要求をしても、『嘘だろ?』って思うくらいのものが上がってくるんです」と力を込め、クオリティの高さに自信を見せる。「そんな技術を持っている人が、昔の『モノノ怪』を観て『すごい』って言うんです。君たちのほうがすごいだろうって僕は思っていました(笑)。『テレビシリーズが大好きで観ていました』というスタッフがとても多く、向上心や学ぶ能力も高く、もっとよくなりたいという気持ちで溢れている人が多い。そういう意味で、とても健康的な現場でした」と「モノノ怪」愛が詰まった現場だったと解説。


大奥に生まれたモノノ怪”唐傘”を薬売り(声:神谷浩史)が斬り、清め、鎮める
大奥に生まれたモノノ怪”唐傘”を薬売り(声:神谷浩史)が斬り、清め、鎮める[c]ツインエンジン

大変な作業でも楽しくコミュニケーションしながら乗り越えられたと充実感を漂わせる。「お客さんが喜んでこそ、というのが大事。甘くするのに砂糖を山盛りにしてもおいしくはならない。ただ甘さをプラスするのではなく、スタバのトッピングのように、シュガーを抜いてクリームで甘みをのせて…と、トッピング感をスタッフで相談しながら制作できたのはすごくよかったです」と笑顔。

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