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【ネタバレあり】本編鑑賞後の人だけ読んで!小ネタ満載『デッドプール&ウルヴァリン』詳細解説レビュー

コラム

【ネタバレあり】本編鑑賞後の人だけ読んで!小ネタ満載『デッドプール&ウルヴァリン』詳細解説レビュー

大量のデッドプールが出現!vsデッドプール・コープス

2人が戻ったことで、TVAのミスター・パラドックスが、虚無へのスパイとしてパイロを送っていたことが判明。虚無での生活を気に入っていたカサンドラは、パラドックスとTVAによる虚無への不可侵条約を結んでいたが、パイロがスパイであったことでその関係は崩壊。カサンドラは時間軸を破壊することができる時間加速器を用いて、すべての時間軸を剪定しようとする。

最もラブリーなデッドプール?として観客を魅了したドッグプール
最もラブリーなデッドプール?として観客を魅了したドッグプール画像はRyan Reynolds公式Instagram(@vancityreynolds)のスクリーンショット

レディ・デッドプールとして出演したライアン・レイノルズの妻、ブレイク・ライブリー(左)とジジ・ハディット(右)
レディ・デッドプールとして出演したライアン・レイノルズの妻、ブレイク・ライブリー(左)とジジ・ハディット(右)[c] 2024 Getty Images/Getty Images for Disney

カサンドラの目論みを止めようとするデッドプールとウルヴァリンだが、彼らの前に虚無からカサンドラが送り込んだ刺客が現れる、それは、ナイスプールやドッグプールをはじめとした様々な時間軸から集められたデッドプールの集団、デッドプール・コープス。このデッドプールたちの元ネタは、「デッドプール・キルズ・デッドプール」と名付けられた原作コミックス。マルチバースのデッドプールが集合し、善と悪に別れて戦うというエピソードであり、デッドプール同士が戦うという部分はしっかりと踏襲されている。ちなみに、わりと目立っている生首だけのデッドプールは、マーベルヒーローたちがみんなゾンビ化してしまったマルチバースからやって来たヘッドプールと言われるキャラクターで、原作コミックスでは一時はデッドプールの相棒的な存在としても活躍した。ちなみに、レディ・デッドプールを演じているのは、ライアン・レイノルズの奥さんのブレイク・ライブリーだ。

このデッドプール・コープスとの戦いで、ウルヴァリンは映画内でこれまで1度も装着することがなかった原作ではお馴染みのマスクを被る。ウルヴァリンの衣装と言えば、原作では黄色のスーツだが、20世紀FOXでの映画シリーズでは、リアリティを重視する形で黒を基調としたデザインに変更。最後まで原作準拠のスーツが登場することはなかったのだが、本作でついに着用し、さらにはマスクまで着けたことも、ここでも長年のファンの想いをもうひとつ実現させたと言えるだろう。

本作でウルヴァリンは、原作コミックデザインのX-MENスーツの姿を初披露
本作でウルヴァリンは、原作コミックデザインのX-MENスーツの姿を初披露[c] 2024 20th Century Studios / [c] and TM 2024 MARVEL.

アクション的なクライマックスとなるデッドプール・コープスとのバトルは、『デッドプール2』から登場し、普通の人間ながらもなぜかデッドプールの相棒として活躍するピーター(ロブ・ディレイニー)が現れたことで事態は収拾。その後、ようやくデッドプールとウルヴァリンはカサンドラの暴走を止めるために、最後の身体を張った世界を救うための行動に出る。

本作が示した“2つのテーマ”

このように、大量のネタが散りばめられる形構成された本作は、改めて振り返ると2つの大きなテーマに彩られていたことがわかる。ひとつは、MCU誕生前にアメコミ映画界を牽引し、盛り上げてきた20世紀FOXへの最大限のリスペクトを捧げつつ、しっかりとした離別宣言をすること。なかでも、旧シリーズとキャラクターたちに向けられた敬意は、作品を通してしっかりとファンに伝わっただろう。

ヒュー・ジャックマン、脚本も担当したライアン・レイノルズ、監督のショーン・レヴィ
ヒュー・ジャックマン、脚本も担当したライアン・レイノルズ、監督のショーン・レヴィ[c] 2024 20th Century Studios / [c] and TM 2024 MARVEL.

そして、もうひとつのテーマは、「過去との向き合い、未来を見る」ということだろう。戦いを終えところに現れたTVAの管理官であるB-15に対し、デッドプールは、虚無にいた人々を元のユニバースに戻すことと、ウルヴァリンの過去の改変を望む。B-15は前者に関しては「やってみる」と約束をしたものの、後者に関しては「過去があったから、いまの彼がある」と申し出を断る。これには、劇中の設定と現実の世界に関係するメタ的要素と2つの意味合いが重ねられている。

ウルヴァリン側の視点から見ると、物語上では、過去に仲間を失ったというつらい想いをしたウルヴァリンの経験があったからこそ、本作では世界を救うことができ、ウルヴァリン自身も新たな人生と向き合うことができたということが大きな要素となっている。そして、もうひとつのメタ的視点では、20世紀FOXの「X-MEN」のユニバースはなくなったが、だからこそファンが望む新しいウルヴァリンの姿がここにあるということが示される。

仲間たちのために戦うことを決めたデッドプール
仲間たちのために戦うことを決めたデッドプール[c] 2024 20th Century Studios / [c] and TM 2024 MARVEL.

一方、デッドプールに関しても、物語上では過去の想いに囚われながら、仲間のために戦う。それは、これまでのシリーズで培ってきた彼の環境や仲間がいた世界を消さないためにするための行動だった。一方、メタ的な視点から言えば、デッドプールというキャラクターがMCUで継続されることは約束されながらも、MCUに加わったことで設定変更され大切な仲間たちが消えるかもしれない状態にさらされたが、この戦いを描いたことでシリーズの基本設定は変わらずに生き残ることが暗示される。

デッドプールは現状を維持し、ウルヴァリンは失ったものを受け入れて新たな未来に目を向けるという、相反する2つの要素を持ちながらもMCUに統合されることへの不安を象徴するように描かれていたのだ。本作では、メタ的な要素を物語の構造に組み込むことで、MCUでもデッドプールとウルヴァリンが共存し、そしてX-MENの新たな世界が拓けるという状況を示しており、まさにファンもひと安心のハッピーエンドとなっているのだ。


【写真を見る】ウルヴァリン役ヒュー・ジャックマンとローラ役のダフネ・キーンのエモいツーショット
【写真を見る】ウルヴァリン役ヒュー・ジャックマンとローラ役のダフネ・キーンのエモいツーショット画像はHugh Jackman公式Instagram(@thehughjackman)のスクリーンショット

ちなみに、ラストシーンでデッドプールの仲間たちにウルヴァリンが加わり、その隣にはローラの姿もあった。彼女は元々デッドプールと同じアース10005の住人であり、彼女が元の世界に戻ったということは、ほかのキャラクターたちも無事自分たちの時間軸に戻れたということだろう。

文/石井誠

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