意外な組み合わせだけど相性抜群!?ハーレイ・クインらがファンタジー世界に飛び込む「異世界スーサイド・スクワッド」のおもしろさ
死と隣り合わせの危険なミッション
もちろん、物語にはスリリングな魅力が宿る。スーサイド・スクワッドのメンバーは脱走防止のために首に爆弾を埋め込まれており、72時間おきに一定のポイントにいないと爆死してしまう。にもかかわらず、王国の治安を乱したとして投獄されたり、戦闘に駆りだされたりと大忙しなのだ。ミッションと共に、自分の命の心配もしなければならない時限設定。さらに、次々と現れる難敵や宿敵も緊張感を盛り立てる。
彼らを迎え入れる異世界のミステリーも興味を引きつける要素。スーサイド・スクワッドを拘束した王国の女王アルドラ(声:能登麻美子)は鉄面皮で本心を明かさないし、対立する帝国側も想定外の武力を次々と放ってくる。王国のプリンセス、フィオネ(声:上田麗奈)もなにやら過去に秘密があるようだ。清楚で可憐なフィオネは民が飢えていることを憂う良心的なキャラでもあるが、スーサイド・スクワッドの面々と奇妙な信頼関係を築く。悪党たちがプリンセスと交流する物語は名作『ルパン三世 カリオストロの城』(79)を彷彿させるものがあり、これまた興味深い。
「スーサイド・スクワッド」らしく異世界を暴れ回る!
「異世界もの」作品としてのお決まりもきちんと踏襲されており、言葉の壁は女王の魔法によってクリア。さらに、もともとかなりの戦闘力を保持するスーサイド・スクワッドの面々だが、異世界に来たことでそれぞれの能力が増幅され、無双状態の強さを手にしている。しかし、そんな彼らの前に立ちはだかるのが、帝国陣営に与している先遣隊のヴィランたち。ネズミと意思疎通ができるラットキャッチャー(声:上田燿司)に天才マッドサイエンティストのシンカー(声:大塚芳忠)、古代の魔女エンチャントレス(声:伊藤静)、ワニ男キラークロック(声:木内太郎)らもまた同じく能力が強化されており、かつて王国の住人だった獣人やエルフを洗脳して大軍で襲いかかってくる。加えて、ハーレイとなにやら因縁ありそうな妖刀使い、カタナ(声:安済知佳)の存在も気になるところ。
一方で、そんな強敵を前に、チームワークなどはないにも等しい、その場のノリと勢い、機転を駆使して乗り越えていくところはいかにも「スーサイド・スクワッド」。特に、エルフ軍を率いるシンカーとの戦いにおいて、ピースメイカーがエルフの一人を拉致し、苛烈な拷問にかける作戦はヴィランである彼らだからこそできる所業だろう。エルフたちは互いの精神がつながっており、あまりの痛みで軍の指揮系統が壊滅。拷問にかけられたエルフが瀕死状態になっているのを見た際は、さすがにほかのメンバーも引いていた。
ジョーカー、アマンダ・ウォラーたちも登場
さらに本作には、ハーレイ・クインの恋人でDCコミック最狂のヴィラン、ジョーカー(声:梅原裕一郎)も登場し、2人のなれ初めがフラッシュバックしたり、かつて彼がハーレイに放ったサイコパスな教えが、困難な局面を打開するヒントになったりもしている。このほか、スーサイド・スクワッドを組織する政府の役人アマンダ・ウォラー(声:くじら)、スーサイド・スクワッドと行動を共にする軍人リック・フラッグ(声:八代拓)など、映画版DC作品でもおなじみのキャラクターが登場し、物語を盛り上げる。
地球のルールが通じないのはハンデだが、裏を返せばルール無用の異世界だからできることもある。ある意味、常識はずれなスーサイド・スクワッドにはぴったりの設定。アニメーションならではの躍動的な世界で悪党たちが繰り広げる大暴れに、ぜひ注目してほしい。
文/有馬楽