俳優のパーソナルなキャラや持ち味が際立つ演技バトル『六人の嘘つきな大学生』など週末観るならこの3本!

コラム

俳優のパーソナルなキャラや持ち味が際立つ演技バトル『六人の嘘つきな大学生』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、浅倉秋成による同名小説を映画化した密室サスペンス、ニコラス・ケイジが主演を務めるスリラー、倉本聰が原作、脚本を手掛けた人間ドラマの、ハラハラする3本。

原作とは異なるユニークな表現に目を奪われる…『六人の嘘つきな大学生』(公開中)

【写真を見る】突然の告発文により次第に疑心暗鬼になっていく6人(『六人の嘘つきな大学生』)
【写真を見る】突然の告発文により次第に疑心暗鬼になっていく6人(『六人の嘘つきな大学生』)[c]2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

浅倉秋成の同名ベストセラー小説を、『キサラギ』(07)、『ストロベリーナイト』(13)、Netflix『シティーハンター』(24)などの佐藤祐市監督が映画化した青春ミステリー。とあるエンタテインメント企業の最終選考まで勝ち進んだ6人の就活生に、“6人でチームを作り上げ、1ヶ月後のグループディスカッションに臨む”という課題が与えられる。だが、最終選考日の直前に“採用するのは1人だけ。その1人を6人でディスカッションして決めて欲しい”という課題に急変。しかも、決戦の舞台の会議室に誰かが置いた謎の文書によって6人の過去の罪が次々に暴かれる衝撃的な展開を迎えることになって…。

異なる魅力とスキルを持った6人の就活生を、浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠が生っぽい言動で体現。告発文の公開でそれまでとは違うひとりひとり裏の顔が露わになるが、それが裏表の顔を巧妙に演じ分ける6人の俳優のパーソナルなキャラや持ち味が際立つ演技バトルになっているからスリリングで目が離せない。はたして、告発文を仕込んだのは誰なのか?誰がいつなにを仕掛け、誰が最終選考で勝ち残るのか?各人が素顔を隠し、ほかの5人の思惑や素顔をうかがう前半戦は朝井リョウの原作小説を佐藤健主演で映画化した『何者』(16)のムードに近いものの、本作はそこから閉ざされた会議室で繰り広げられる緊迫した密室ミステリーの様相に。すべての真相が解き明かされるクライマックスでは、キャスト陣も驚いたという、原作とは異なるユニークな表現に目を奪われることになる。(映画ライター・イソガイマサト)

奇想天外にしてウェルメイドな快作…『ドリーム・シナリオ』(公開中)

何百万人もの人々の夢に現れたことで一気に有名になった男の物語を描く『ドリーム・シナリオ』
何百万人もの人々の夢に現れたことで一気に有名になった男の物語を描く『ドリーム・シナリオ』[c] 2023 PAULTERGEIST PICTURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

いまをときめく独立系の映画会社A24が製作、全米配給を手がけ、ホラー界の鬼才アリ・アスターがプロデューサーとして参加。さらに怪優ニコラス・ケイジが主演を務めた本作は、“夢”をモチーフにした幻想スリラーだ。ごく平凡な大学教授のポール(ケイジ)が、他人の夢の中に出没する摩訶不思議な現象があちこちで勃発。一躍有名人となり、家族や教え子にもモテはやされるようになった彼の悲喜こもごもを描く。

地味で目立たない中年男の日常がふとしたきっかけで一変する、いまどきのSNS社会を痛烈に風刺。ケイジがシュールなまでにトボけた存在感を発揮する夢のイメージにも目を奪われる。はたして大炎上の悪夢にも見舞われる主人公の迷走は、どこへ行き着くのか。監督を務めたのは、ホラー・テイストの異色心理劇『シック・オブ・マイセルフ』(23)で脚光を浴びたノルウェーの気鋭クリストファー・ボルグリ。ユニークな才能たちのコラボレーションによって生まれた奇想天外にしてウェルメイドな快作、ぜひご覧あれ。(映画ライター・高橋諭治)

我々自身の生き方の美醜にまで繋がる…『海の沈黙』(公開中)

倉本聰による渾身のドラマを実写化した『海の沈黙』
倉本聰による渾身のドラマを実写化した『海の沈黙』[c]2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD

ドラマ「北の国から」、「やすらぎの郷」など多数の話題作を生みだして来た名脚本家の倉本聰によるヒューマン・ミステリー。なんと構想60年、1960年に起きた“永仁の壺事件(重要文化財とされてきた壺が贋作と発覚後、文化財指定から解除され、関係者は引責辞任に)”から、「美とは何なのか」というテーマを抱えてきたという。本作でも冒頭、著名な画家の展覧会で“贋作事件”が発覚する。同じ頃、全身を刺青で覆われた女の死体が上がり、2つの事件が絡み、かつて消えた天才画家の存在が浮かび上がる。

本木雅弘主演とくれば、その消えた天才画家=本木と想像は難くない。本作は贋作者を追うミステリーではなく、彼はなぜ姿を消したのか、いまどこでなにをしているのか、なぜその絵を描いたのかという、彼の壮絶な人生こそが最大のミステリーの見せ場となっている。なかなか姿を現さない“もったいぶり感”、いかにも怪しげな“サスペンスフル”な映し方、艶やかな女体のエロスが目を引くどこか挑発的な空気は、60年代あたりの邦画サスペンス映画を彷彿とさせる。そんな空気感に刺激されながら、追いやらせてきた彼の人生に思いを馳せ、かつての恋人(小泉今日子)との邂逅シーンなどは、深い想いが溢れ出て落涙を免れない。そして“美とはなにか”、“誰が美を決めるのか”あるいは“贋作と本物の価値について”などの問いかけが、我々自身の生き方の美醜にまで繋がり、いつまでも沈思させる。監督は、『沈まぬ太陽』(09)、『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』(20)の若松節朗。(映画ライター・折田千鶴子)


映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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