タランティーノ、カウリスマキが所有する劇場も。映画ファンならいつかは行きたい世界のユニークな映画館を集めてみた
数々の傑作で知られる映画監督のアキ・カウリスマキが、フィンランドの鉄鋼の町カルッキラに、2021年にオープンさせた映画館キノ・ライカ。この映画館が開業される様子を記録したドキュメンタリー『キノ・ライカ 小さな町の映画館』が公開中だ。そこで今回は、映画好きなら一度は行ってみたい、ユニークな特徴を持つ世界の映画館を集めてみた。
アキ・カウリスマキ作品に迷い込んだかのようなキノ・ライカ(フィンランド)
フィンランドの首都ヘルシンキから車で1時間ほどの場所にある、人口9000人ばかりの小さな町、カルッキラ。森と湖と、いまは使われなくなった鋳物工場しかないこの町の”初めての映画館”として誕生したのがキノ・ライカだ。
この場所に長らく暮らすアキ・カウリスマキが、友人の詩人ミカ・ラッティと共に共同経営者を務めるキノ・ライカは、工場の一角を改装したもので、レンガ造りの外観が魅力的。スクリーンに加えて、豊富なセレクションを誇るワインバーや、小川に面したテラスを備えた複合文化施設となっている。
映画のセット設営もやってきたカウリスマキ監督が、デザインや色彩、コンセプトといった現場責任者を担当したため、モダンなバーの看板や犬のライカの絵など、カウリスマキ作品の要素を至るところに感じることができる。
実際、バーカウンターは『浮き雲』(96)のレストランや『希望のかなた』(17)の怪しい寿司屋で登場したものが使用されており、ファン垂涎の空間となっている。ちなみにカルッキラの町は『希望のかなた』などでも登場しており、『枯れ葉』(23)の鋳造所のシーンはキノ・ライカの隣の工場で撮影されたそうだ。
『キノ・ライカ 小さな町の映画館』では、6月に工事を始めて10月にはオープンというものすごいスピードで誕生したこのキノ・ライカに密着。実際に自分の手で椅子を取り付けたり、スクリーンを張ったり、工事仕事に勤しむカウリスマキの姿が映しだされていく。
カウリスマキはもちろん、ジム・ジャームッシュといった親交のある人々のインタビューやカルッキラの風景を通じ、この田舎町への思いや映画館を作った理由が語られており、キノ・ライカを訪れたくなる一作となっている。