祝70歳!批評家が選ぶ、デンゼル・ワシントンの代表作ランキング。引退も噂される名優の“フレッシュ”10選
『グローリー』や『マルコムX』…キャリア初期の作品が相次いで上位に!
最も高い評価を獲得したのは、のちに『ラスト サムライ』(03)を手掛けるエドワード・ズウィック監督が、南北戦争時に実在した黒人部隊を描いた『グローリー』の95%フレッシュ。南部から逃れてきた元奴隷たちが大半を占める北軍の第54連隊。厳しい訓練を経て目覚ましい成長を遂げた彼らは、自分たちの誇りをかけ、難攻不落のフォート・ワグナーでの戦いに挑んでいく。
同作で白人への強い憎しみを抱えるトリップ二等兵役を好演したワシントン。この2年前に『遠い夜明け』(87)で実在の活動家スティーヴ・ビコを演じて初めてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされていた彼は、2度目の候補にしてオスカー俳優の仲間入りを果たす。また同年のゴールデン・グローブ賞でも助演男優賞を獲得し、一躍脚光を浴びることとなった。
上位10タイトルがほぼ90%前後という非常に高いスコアを叩きだしているが、特に興味深いのは、そのうち8作品が1995年以前のキャリア初期の作品だということ。原作の舞台劇と同じ役を演じた『ソルジャー・ストーリー』や、妖術師の助言を得て事件に挑む警察署長を演じた『刑事クイン 妖術師の島』、そして演技派俳優としての絶対的な地位を確立した傑作『マルコムX』など、代表作と呼べるものから、なかなか語られる機会のない作品まで幅広い。
一方で1996年以降の作品から上位に食い込んだのは、自身が主演を務めトニー賞に輝いた同名舞台劇を自ら監督&主演で映画化した『フェンス』と、フランシス・マクドーマンドと共演したシェイクスピア原作の『マクベス』の2作品。どちらもこの10年以内の作品であり、しかもアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた作品だ。ワシントンの60代のキャリアは、この2本と「イコライザー」シリーズが牽引したといってもいいだろう。
ちなみに上位10傑に入らなかった代表的な作品をいくつか取り上げていくと、『遠い夜明け』が73%フレッシュ、『フィラデルフィア』(93)が81%フレッシュ、『戦火の勇気』(96)が86%フレッシュ、『ザ・ハリケーン』(99)が83%フレッシュ、アカデミー賞に輝いた『トレーニング デイ』(01)は74%フレッシュで、『アンストッパブル』(10)は87%フレッシュ。いずれも高評価ぞろいだが、惜しくも上位までは届かなかったようだ。
最近ワシントンは、向こう数年以内で俳優業から引退する意向を明らかにしている。とはいえ盟友スパイク・リー監督と久々のタッグを組む『Highest 2 Lowest』が控えていたり、「ブラックパンサー」の第3弾でMCU入りを果たす予定や、「イコライザー」シリーズのさらなる続編が進行しているなど、実際に引退するのはまだまだ先になりそう。『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(24)で第81回ゴールデン・グローブ賞助演男優賞にもノミネートされているワシントン。演技部門だけで10度目のアカデミー賞ノミネートはもちろん、3度目のオスカー獲得もそう遠くはないだろう。
文/久保田 和馬