キム・ゴウン、チョン・ヘイン、ピョン・ウソク、コ・ミンシ…映画ライターが選んだ2025年注目の韓国スターたち
『ソウルの春』のファン・ジョンミン、『破墓/パミョ』のキム・ゴウン、『密輸 1970』のキム・ヘスら2024年に日本で公開・配信された映画やドラマで印象的な活躍を見せた韓国のスターたち。この年末年始に開催されている様々なアワードでも華やかな衣装に身を包み、視聴者たちの心をつかんでいる。そのアワードの結果や日本ではまだ公開されていない期待作の情報も踏まえ、韓国映画・ドラマに詳しいライターたちに「2025年の主役はこの人!」と“推し”のスターたちを紹介してもらった。
カリスマムーダンと自由奔放なヒロインで2024年の韓国映画界を席巻したキム・ゴウン
衝撃のデビュー作『ウンギョ 青い蜜』(12)以来、映画俳優として着実にキャリアを築いてきたキム・ゴウン。2024年は『破墓/パミョ』、『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ(原題:대도시의 사랑법)』という2本の主演作が公開。秘密の隠された古い墓を暴くオカルトスリラー『破墓/パミョ』では、伝統的なシャーマンになりきり、トランス状態で儀式に没頭するシーンの迫力で観客の度肝を抜いた。『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』では一転し、自由奔放に生きる女性の大学時代から30代までを軽やかに見せ、俳優としての無限の可能性を感じさせた。
(ライター・佐藤 結)
2024年魅力満開の女優は百想芸術大賞や青龍映画賞で主演女優賞を総なめしたキム・ゴウン。2024年観客数最多(1,191万人)を記録した映画『破墓/パミョ』の大ヒットを牽引したのは間違いなく巫堂(ムーダン)のファリム役で主演したキム・ゴウンだった。巫堂といえば神がかった演技が見せどころだが、期待を裏切らない、何度も繰り返し見たくなるような名演だった。一方で、キム・ゴウン史上最高のはまり役だったと思うのは、日本でも公開が期待される映画『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』。ドラマ「パチンコ」で注目を浴びたノ・サンヒョンとの相性も抜群で、恋人にも勝るような男女の深い友情が描かれた。自由奔放な主人公ジェヒをキム・ゴウン特有の弾けるような明るさで演じつつ、周りの誤解に人知れず傷つく繊細さ、男性にも「かっこいい」と惚れられるような豪快さまで、目が離せない。本作で招待されたトロント国際映画祭で見せた破格のショートヘアも話題を集め、次作のNetflixシリーズ「自白の対価(原題:자백의 대가)」が待ち遠しい。
(ライター・成川 彩)
「トッケビ 〜君がくれた愛しい日々〜」をはじめ、「ユミの細胞たち」「シスターズ」など出演したドラマの数々が社会現象級の大ヒットとなり、今ではすっかり韓国を代表する人気女優となったキム・ゴウン。時には宿命を背負った少女、時には平凡な女子大生や会社員などと、幅広い役柄を自然体かつ繊細な演技で見事演じ分けてきた彼女は、2024年に公開された『破壊/パミョ』で役者として更にブラッシュアップした姿を披露。劇中では、悪霊を鎮めるカリスマシャーマンに扮し、韓国の伝統的な儀式「대살굿(テサルお祓い)」のシーンで見せた本物さながらのど迫力演技が大絶賛された。本物のシャーマンの元を訪れて役作りに挑んだ努力の甲斐もあってか、「青龍映画賞」「百想芸術大賞」など名誉ある授賞式で最優秀女優賞を獲得。映画も、観客動員数1,000万人超えの2024年韓国No.1ヒット作となった。そして、2025年には新作主演映画『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』の日本公開に期待。本作では、人の顔色を伺うことを知らない自由奔放なヒロインという、これまた彼女の演技遍歴でかつて見たことないタイプの人物を演じるそうだが、どんな新境地を見せてくれるのか楽しみだ。
(ライター・AMO)
かつての観客動員数更新王が復活!『満ち足りた家族』で意外な顔を見せるチャン・ドンゴン
元祖“韓流四天王”のチャン・ドンゴン。韓国で「彫刻美男」と呼ばれてアイドル的人気を博した30代までは、『友へ チング』(01)、『ブラザーフッド』(04)など観客動員数更新王として知られていた。ところが、ここしばらくはヒット作に恵まれず、「あの人は今」的な存在に。そんななか、試写を観て“チャン・ドンゴン、ここにあり!”と唸ったのが、1月に日本で公開される『満ち足りた家族』だ。正義を守るセレブな医師役という設定に「奇をてらわぬ配役…」と思いきや、想定外のキャラ変に驚愕。ポーカーフェイスの奥にある深遠なる闇(もちろん、いい意味です)を目撃した瞬間、一気に私的推し俳優に浮上した。年輪を重ねるチャン・ドンゴンのこれからに期待大!
(ライター・桑畑優香)
『ケナは韓国が嫌いで』で厳しい韓国社会を生きるヒロインを好演したコ・アソン
しなやかで、強くて、媚びない。コ・アソンには、「凛とした」という言葉がよく似合う。その姿勢は、映画デビュー作『グエムル 漢江(ハンガン)の怪物』(06)で芯が強い少女を演じたときから、まったくぶれず。当時、「天才子役!」と驚嘆し、ペ・ドゥナの推薦によってポン・ジュノ監督が抜擢したというキャスティング秘話に至極納得したのだが、いまやすっかり主役を張る俳優となった。ドラマ「風の便りに聞きましたけど⁉」のようなコミカルな作品も器用にこなしつつ、コ・アソンらしさが生きるのは、『サムジンカンパニー1995』(20)をはじめとするリアリズムに満ちた作品ではないかと思う。一昨年の釜山国際映画祭オープニング作品として上映された『ケナは韓国が嫌いで』が日本でも公開に。一足先に観た本作では、キラキラではない韓国の現実を生きる主人公を、地にしっかり足がついた芝居で魅せている。
(ライター・桑畑優香)