ワクチン普及の功労者!江戸時代の町医者夫婦の奔走に感動が止まらない…『雪の花 ―ともに在りて―』を時代劇ビギナーはどう観た?
『博士の愛した数式』(05)、『峠 最後のサムライ』(20)などを手掛け、巨匠、黒澤明の助監督も務めた小泉堯史監督が、吉村昭の同名小説を映画化した『雪の花 ―ともに在りて―』(1月24日公開)。江戸時代末期を舞台に、多くの人命を奪った天然痘と闘った1人の町医者の実話を描く。主演の松坂桃李をはじめ、芳根京子、役所広司、吉岡秀隆、三浦貴大、宇野祥平ら豪華キャストが出演。疫病に立ち向かった医師の熱い想いと妻との絆、2人の真摯さに突き動かされていく人々の姿が大きな感動を呼ぶ。
「SHOGUN 将軍」、『侍タイムスリッパー』(24)の大ヒットによって時代劇への注目が集まっているなか、MOVIE WALKER PRESSでは本作の試写会を実施し、「実は時代劇を観るのは初めて!」という映画ファンも駆けつけた。「時代劇と医療ドラマとして両方楽しめるものだった」(40代・女性)や「普段は観ないジャンルでしたが、物語がわかりやすく、スムーズに入ってきました」(20代・女性)、「信じた道を進むことの大切さ、命をつなぐことの大変さを実感しました」(30代・女性)といった感想コメントからも心に響く物語であったことがうかがえる。本作にはどのようなメッセージが込められているのか?ひと足早く本編を鑑賞した参加者たちの声をピックアップしながら、その魅力に迫っていきたい。
ワクチンの先駆け!未曽有の疫病から日本を救う町医者の実話
江戸時代末期。死に至る病として恐れられていた疱瘡(天然痘)が猛威を振るい、多くの人命を奪っていた。福井藩の町医者で漢方医の笠原良策(松坂)は、そんな現状を目の当たりにしながらも患者を救うことができず、なにもできない自分に無力感を抱いていた。ある日、大聖寺藩の町医者、大武了玄(吉岡)と出会った良策は、彼から西洋ではいかに医学が進歩しているかを聞き、そこに活路を見いだそうとする。友人のつてを頼りに京都の蘭方医、日野鼎哉(役所)のもとで学び始め、異国には「種痘」という疱瘡の治療法があることを知る。「種痘の苗」を海外から取り寄せようとする良策だが、そこには数々の困難が立ちはだかるのだった。
すべては1人でも多くの患者を救うため!新しい可能性に懸ける主人公、笠原良策の生き方
参加者からのコメントで最も多かったのが、主人公の町医者、笠原良策の人々を救いたい、疱瘡を根絶したい、という熱い想いに「感動した」という声。漢方医である良策は当初、異端だとして蘭学を突き放す反応も見せるが、すぐに医学の道においてそのような偏見は不要だと考えを改め、一から学び直そうとする。また、誰も近寄ろうとしない疱瘡で亡くなった人たちの埋葬地を訪れ、そこで病から回復しながらも家族を失い、生きることに絶望している女性、はつ(三木理紗子)に優しく寄り添う人物でもある。
「病にまっすぐ向きあう姿がすばらしかったです」(30代・女性)
「自分の身を捧げて新しい可能性に懸ける姿にとても心打たれた」(30代・女性)
「自分が学んでいたこと以外にも挑戦し、病を治そうとする意志の強さがすごかったです」(30代・女性)
「礼儀正しく、自分の信念にまっすぐに人生を歩いた人」(40代・女性)
「一貫して人を救いたいという意志を感じました。はつに対してずっと気にかけているところが町医者らしいというか、身近な人、一人ひとりを大切にしているんだと思いました」(30代・女性)
良策が実践しようとするのは、現代でいう予防接種およびワクチン接種にあたること。当時は「種痘」と呼ばれ、「種痘の苗」を子どもたちに接種することで免疫を作っていた。京都でようやく成功してできた「種痘」を新鮮なうちに福井に持ち込むため、良策一行は雪が吹き荒れるなかでの山越えを決行する。
また、日本は当時、鎖国の時代。西洋の文化が禁じられていた人々にとって、蘭方医学(西洋医学)は馴染みがなく、藩の上層部をはじめ漢方医学にこだわる医者のなかには抵抗する者も多かった。許可と協力を得るため、彼らに対して良策は、まっすぐに種痘の必要性を説き続け、役人に対しても毅然とした態度で対峙している。
「吹雪のなか峠を越えるシーンで、倒れる人がいても決して諦めない、声をかけ続ける姿に強く心を打たれました」(20代・女性)
「上の人物へも物怖じせず、自身の信念を貫く姿勢が印象的だった」(50代・女性)
「立場が上の人にも自分の意見を臆せず伝え、協力を仰ごうとする強さ」(30代・女性)
「清然とし、腕っぷしも強く、日本的なヒーロー像としての理想を体現されていた」(30代・男性)
このほか、「こういう人のおかげで、いまの自分たちが病気にかかっても治療できることに感謝したい」(20代・女性)や「何事にも恐れずに取り組む姿は真似をしたい」(20代・女性)、「疫病をどうにかしたいという思いが目力から伝わりました」(20代・女性)といった尊敬を言葉にするコメントも。良策の人柄を、柔和な表情と背筋がピンと伸びた凛とした佇まいで体現した松坂桃李の演技も絶賛されている。