『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太が後輩監督らと語り合う!「日本ホラー映画大賞」入賞監督が集合
「“人ならざるもの”、本格的なモンスター映画をやってみたい」(小泉)
――小泉監督と及川監督は商業映画監督デビューを目指していくとのことですが、今後挑戦してみたいことは?
小泉「僕は怪獣とかお化けとか、“人ならざるもの”をやりたいですね。以前からギレルモ・デル・トロ監督が好きだと公言しているのに、結局ヒトコワになってしまうし、今回もエイリアンを出したけれどそっちの方向にいってしまいました。そろそろ本格的なモンスター映画をやってみたいです」
近藤「『シェイプ・オブ・ウォーター』みたいな感じですか?」
小泉「そうですね、『シェイプ・オブ・ウォーター』大好きなんです。あれもある意味ではヒトコワですけど、異形への愛があって、いかにもデル・トロ監督のスタイルじゃないですか。今回の作品で造形の方と仲良くなれたので、そっちの方向で勝負していきたいと思っています」
及川「僕は今回の映画でも不幸が次から次へとやってくる“地獄めぐり”みたいなものをやったので、次はもっと“地獄感”の強い映画を撮りたいなと思っています」
近藤「高橋洋さんの影響を感じる、美学校生らしい発言ですね(笑)。その地獄のなかでホラーを追求していくと」
及川「はい、まさに高橋さんの影響です(笑)。今回特に悩んだのは、幽霊表現だったんです。幽霊って描ける人と描けない人がいて、僕は後者なのではないかと感じたんです。だから幽霊表現でも“本当に怖い”と思えるものを目指していきたいです」
近藤「いいですね。僕は幽霊を映さない派ですけど、たしかに怖く撮れる人とそうでない人がいますよね。撮影のうまさとかテクニックもあると思いますが、あれはやっぱり感性なんでしょうね」
及川「『こいつ、わかってるな…』と観客に思わせるようなものを撮ってみたいですね」
近藤「本気で怖いと思って撮っている感じを観てみたいです。及川監督はジョン・カーペンター監督が好きだとおっしゃっていましたが、そのアグレッシブさをやりたいのかなとも感じたんですが」
及川「今回の作品の始まりも、まさに『クリスティーン』をやりたいというところからだったんです。最初はトラックにする予定はなかったんですが、ちょうど父親の車があれだったので…」
近藤「お父さん、めちゃくちゃイカつい車乗ってますね(笑)」
及川「おかげで主人公の車よりも大きくて威圧感があって、スティーブン・スピルバーグ監督の『激突!』っぽい要素も出てきました」
近藤「実際に殺傷能力が高そうで説得力がありますよね。宇野さんも講評で車の描写をすごく褒めてらっしゃいましたし」
――及川監督は、カーペンター監督以外に憧れや目標にしている監督はいるんですか?
及川「尊敬しているのはジョナサン・モストウ監督です」
近藤・小泉「!?」
及川「『ブレーキ・ダウン』とか『U-571』が大好きで。あと最近DVDを手に入れて、テレビ映画時代の『F-16 Flight of Black Angel』という戦闘機の作品を観たのですが、それもすごくおもしろかったです」
小泉「モストウ監督って最近撮ってるんですか?」
及川「近年はあまり大きい作品をやっていないのですが、サム・ワーシントン主演の『ザ・ボディガード』とか…あとはドラマシリーズも撮っているようです。もっと大作アクションを撮ってほしいのですが…」
近藤「こういうところでモストウ監督の名前を挙げる人は初めて見ました(笑)」
及川「あと2、3年前に観た『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のパノス・コスマトス監督も好きです。『ランボー 怒りの脱出』のジョージ・P・コスマトス監督の息子さんなんですが、あの人の新作も早く観たいですね」
近藤「さすが映画美学校生…。チョイスが通すぎます(笑)」
文/久保田 和馬